YusukeSBM

PERFECT DAYSのYusukeSBMのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5
一連の流麗な所作で肉体が躍動し、腕の一振りが、それ以外の全てが不正解だったかと思うほどに正しい場所に降ろされる。顔面の筋肉を弛緩させ、誰に向けられることもない微笑を湛えて身体は機械的に静止する。私たちは、その非現実的な定型的完全さにある種の心地良さを感じ、超然としたクレンリネスにはいささかの気味の悪さを覚える。

日常の展開とともに他者が現れては去ってゆく。定型が崩れる瞬間こそに彼の微笑みは乱れ、最後には"Feeling Good" とともに滲む瞳のエラーによって崩壊は決定的となる。単なる不安や恐怖という言葉では形容し尽くせない、押し殺していた悲哀が溢れ出す。それは現在性に身を置いていた人間が死を眼前にしたときに覚える、忘却や不在への確かな抵抗であり、また、それによって「平山」という男は物語の枠から解放され、画面に刻みつけられたその人間存在がありありと表出する。

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リバースショットの平山視点で映る、木々や田中泯は明らかな対比であり、憧れ。
Patti Smithに触れたアヤが泣き出しそうになる構造的な反復として平山のラストがあるとすると、それも対比か?
役所広司のキャリアハイでは。知らんけど。
芸術。
YusukeSBM

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