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エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命のhydrangeaのレビュー・感想・評価

4.0
地政学的にも、宗教学的にも、ヴィジュアル的にも、イタリア人にしか作れなかった映画だと思う。
そもそもゲットーというユダヤ人収容地域を指す言葉は、イタリア語の鋳造場からきている。鋳造場跡地にユダヤ人を住まわせ、夜の外出制限をしていたなどの歴史がある。とはいえ勤勉で商才に長けた彼らは、不利な商取引でも利益をあげていた。
主人公の家の女中がカトリック教徒だったということからも、もはや経済的には優位な立場だったのだ。
そこへ持ってきて、地盤が緩みはじめていたカトリック教会、ユダヤ人子息を取り込むことで宗教的支配者になるためには、なりふり構わずと言うか。
家族が不在の部屋で女中が赤ん坊のおでこにチョロっと水をかけておまじないを唱えるだけで洗礼と見なすなんて、カトリック教会の地に落ちた感、半端ない。
ユダヤ人家族にとっては大悲劇だったが、郷に入れば郷に従えというか、6歳だったら容易く外国語を習得するように、その宗教社会に取り込まれて手厚く洗脳されれば、簡単に改宗しちゃうよね。最後まで宣教師として生きたあたり、本人はもう向こうの人として生きるしかなかったってことかと。
ときおり見せる葛藤はあるが(法王に体当たりしたり、法王の亡骸を河に捨てる騒ぎに加担したり)、母親の臨終に際してこっそり持ち込んだ水で洗礼を施そうとした場面は、彼が本当に良きものとして信じるのが何であるのかが、本人にも周りにもはっきりした瞬間だった。
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