スワヒリ亭こゆう

ポトフ 美食家と料理人のスワヒリ亭こゆうのレビュー・感想・評価

ポトフ 美食家と料理人(2023年製作の映画)
3.8
料理映画って当たりが多い気がします。
料理というのは画が魅力的に映りますし、実は一番身近な芸術の様な気もします。

本作はトラン・アン・ユン監督がカンヌ映画祭監督賞を獲った作品です。
フランスの大女優ジュリエット・ビノシュが料理人、ブノワ・マジメルが美食家を演じています。
この美食家というのはフランスならではですよね。日本で美食家って自分で言ったら馬鹿にされますよね。美食家が成り立っているのがフランスっぽいです。
で、本作に於ける美食家というのが凄く曖昧に感じました。てっきり観るまでレストランの話だとばかり思っていたんですけど、そうじゃないんです。
美食家が料理人と暮らして美食家の仲間を集めて家で料理を振る舞う。ジュリエット・ビノシュ演じるウージェニーは料理をする。これは分かる。ドダン(ブノワ・マジメル)はメニューを考える。だけ?ドダンは料理もしてましたけど、基本的にはウージェニーが作っているんですね。
どうやって家計が成り立ってるのか?さっぱり分からない映画でした。
金の事は言うなよって思うかもしれないけど、生活感が見えないです。
現代の様にグルメ本とかメディアでグルメを扱う媒体は沢山あります。現代なら成立する職業ですが、19世紀の話なので美食家が職業として成立してるのか分からないです。
フランスならではの文化なのかもしれないです。日本のお相撲さんの【ごっつぁんです】みたいな文化なのかもしれません。

ドダンはそもそも序盤に料理をする必要があったんでしょうか?
ウージェニーに愛を込めて料理を振る舞うシーンがありました。
序盤でドダンが料理をしているので上手なのを観客は知っているんです。その後に料理人・ウージェニーに逆にドダンが料理を振る舞う。
ドダンが料理をしない人でいつもウージェニーに作らせていたのに、ドダンが見事に料理をして彼女がそれを堪能した。それならば良いシーンだと思いますが、ドダンが料理が出来るのを知っているので感動的なシーンとまではいかなかったです。

褒める所もあるんです。
料理を映すカットが美しいだけでなく、調理の工程のカットも美しかったです。
美食というのは作り方すらも拘るんだというのが伝わるカットでした。
本作の一番観ていて楽しいのは調理のシーンでしたから。

全体的に肯定的な印象なんですけど、どこを褒めるのか?調理のシーンになってしまいます。
もっと面白くなりそうな映画な気がします。惜しいストーリーでした。