トラン・アン・ユン監督の映画はいたわりと慈しみに満ち、深い余韻を残す。
『青いパパイヤの香り』もそうだった、その匂いも嗅覚を刺激するような演出。
人間以外が発する匂いを感じる。
本作は料理をしている人なら記憶のある体感、その思いがよみがえる。
よそよそしいふたり。
美食家と料理人であるふたりの鍵のエピソードと季節の話は、その距離と生命を喩えた詩のようで美しい。
鳥のさえずり、木々が風にそよぐ音、穏やかな日常。
平和であることの感謝を素直に思う。
ジュリエット・ビノシュとブノワ・マジメル、
最高にカッコいい、貫禄も余裕もある。
劇場公開時観に行きたかったが飼いはじめたワンコがまだパピーだったので家を空けられなかった。
もうすぐ1歳の誕生日を迎えるワンコは頭を僕の腿に付けて居眠りをする。
こんな状態で本作を観られるなんて幸福でしかない。