Yui

落下の解剖学のYuiのネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

裁判劇だけど真実がわかって犯人がわかってスッキリ!というタイプの映画ではなかった。判決が出た後の勝ち取った感があまりなくて、マスコミのガヤガヤした騒音に心がざわざしてまだ何か起こりそうで安心できなかった。主人公のサンドラも思ったより心が晴れなかったと言っていたし、マイナスからゼロに戻っただけなのがリアル。

一応主人公はザンドラヒュラー演じるサンドラだし彼女に1番目を向けて話を追って観たけど、夫婦喧嘩が公開されるシーンから転落死した夫の思いとは何だったのか強制的に考えさせられる様になるのが何とも…。死人に口なしでみんな好き好きに言う中、回想シーンで傷心の彼の事を思わずにはいられない。
あの夫婦喧嘩のシーンは胃がキリキリして恐ろしかった。さり気なく女尊男卑ぽくなっている様な気もする。

夫婦の物語であり、裁判劇であり、幼い息子の成長物語でもある。息子のダニエルが最後に裁判で話した父親の話はあれは真実だったのか少し疑問。回想シーンで父親が話すシーンが最後まで父親の声ではなくのダニエルの声だったのが心に引っかかっている。こんな事を書くのも野暮か?と思ってしまうぐらい、真実が全ての裁判劇なのに全てが曖昧。(悪い意味では決してなく)
ただあれが真実であろうとなんだろうと、1人欠けた新しい体制の家族で生きていく決意を、残された家族を守る決意をして腹を括った事は確か。

最後にサンドラとヴァンサンがキスしないのが良かった。大人の別れ方だった。
ヴァンサン役のスワンアルローがロマンスグレーの似合う紳士で素敵すぎた!
テレビのインタビューとか受けてるシーンあったけど、あんなのすぐに人気がでてしまいそう。

犬のスヌープが可愛くていてくれて良かったし、(だからこそのあのシーンの残酷さ)演じるメッシくん、本当にナイスアクトでした!パルムドッグおめでとう✨

世の中にはグレーな物事が存在していて、自分がグレーの世界に迷い込んでしまったのなら自分で白か黒に選択しなければならない、最後は信じたいものを信じるしかないのだと感じた。
Yui

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