和

タイタニックの和のネタバレレビュー・内容・結末

タイタニック(1997年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

私の人生の映画。

至高だった。俳優がかっこいいからとか、ノンフィクションを元にしているからとかそんなお粗末な理由では片付けられないほど。
前から、タイタニックのディカプリオがかっこよくていつか見よう、いつか見ようとは思っていたけれど、なかなか見られずに。
そんな時に金曜ロードショーでやると知ってすごく嬉しかった。

前編と後編を二週間に分けて放送するとなっていたけれど、テストの関係でテストが終わったその日に一気見。
まず初めに。ディカプリオもさることながら、吹き替えの声が素晴らしかった。
少し生意気そうだけど、憎めないイメージ通りの少年の声だった。
さらに、この映画が三時間もあるのはタイタニックが沈むまでの2時間40分を観客にも体験してもらうためだと知って驚いた。

いつか動画で見た、「あの2人の初めのシーンはヌードの場面だ」という知識があったからこそとても刺激的だった。
身分は低いがとても自由なその日暮らしのジャック、それとは正反対に何一つ不自由はなく自分の好きな絵だっていくらでも買えるが高い身分に縛られているローズ。

そう、不自由はないというのはイコール自由ではない。

しかし彼らはその身分の差に最後の最後まで苦しめられた。
たった数日、狭い船の上での物語だったかもしれないがそこには確かに「愛」があった。身分の差を超えた。

ローズの婚約者は、金にものを言わせ全て自分の得になるようにしないと気が済まない男だった。実際に、彼は自分の威厳が傷つけられると容赦なくローズを傷つけたし、彼は嘘をついて婚約者の命を見捨ててまで「生」に縋りついた。

ジャックはどうだろう。彼は回想の冒頭で「ちょうどこんな海に溺れた時、痛くて冷たくて苦しかった」といった。
彼は、その「痛み」に自ら飛び込んだ。ローズを愛していたから。

自分の語彙力には、心底絶望するがこの映画を表すには「愛」という言葉しかない。


もし現代でタイタニックを作るなら、きっと2人とも助かるような結末にするだろう。なぜなら2人は、あの2人だけは実際にあった事故を語る映画の中での唯一のフィクションなのだから。


しかし、それではダメなのだ。それは決してロマンチックを追い求める訳ではない。


その船には、ノンフィクションの「差別」があったから。その差別をロマンチックに昇華させることはできないから。

最後までジャックのことを軽蔑し続け、救助ボートに乗る時すらも自分のことしか考えなかったローズの母親。
最後まで救助ボートに乗るどころかデッキにすら上がらせてもらえなかった下級身分の人たち。
成金で高い身分になったためまだ下級身分の心を忘れておらず、ジャックの面倒を見てやり助けに戻ろうと言った婦人。
身分の高い人たちの言いなりになり、定員に全く満たないような人数でボートを出した船員。

そこにははっきりと目に見える差別がある。そんなはっきりとした差別がある中で本当に身分を超えた恋愛など成立するのだろうか?いや、存在しない。それが逃れられない運命なのだから。

ローズとジャックの関係性は唯一のフィクションでありながら、1番ノンフィクションを体現しているのだ。



最後のシーン。ジャックの目は開かずローズがジャックの手を離すシーン。
その場面だけを見てみればそこに愛などあるのか、と疑う人もいるだろう。
けれど、それが2人の愛の形だ。お互い飛び込む時は同じだと言ったけれど、それを裏返せば生きる時も同じ。どちらかが生きれば必ず2人は永遠に生き続ける。
そこまで考えてはいなかったかもしれないが、ローズの心では最後の力を振り絞り笛を吹いたその時でさえもジャックがいただろう。

彼女は、タイタニックを調査する船に大量の写真を持ち込んだがそれは全て彼女1人の思い出の写真だった。全てジャックと2人で叶えるはずだった「憧れ」。

そして、最後のシーン。ジャックもローズも2人とも本来の姿で、たくさんの人の賞賛の拍手に囲まれながら抱き合う。ローズの胸元には青いダイヤはない。これはローズが唯一1人では実現できない憧れ。
時計は沈没したその時間を指していて、ジャックの命が尽きたその時から2人の永遠は始まったとも言えるのかもしれない。

老婆になったローズは宝石のネックレスを海に投げ捨てる。それは婚約者が、ローズの気を引くために渡したものだ。しかしそんなものとは比べられない程の愛がそこにあった。
ジャックが冷たい海に体を投げた後でもまだ、自分はローズに出会えて幸運だと言えるのがその最大の証拠だろう。

不朽の名作、何年経とうと愛の形だけは変わらないのだと教えてもらえた。
至高の映画だった。

初めて見た時の興奮そのままに、つらつら書いたまとまりのない感想置いておく。
和