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劇場版 優しいスピッツ a secret session in Obihiroのmasayaのレビュー・感想・評価

4.2
メジャーデビュー30年のスピッツ。帯広の築百年の建物で行った無観客ライブを気鋭の松居大悟監督が撮る。メロディアスなセットリスト。リラックスしたメンバー。温かな光と色の効果でいつも以上に親密さを感じるライブはまさに「ひみつスタジオ」の中に入ったかのよう。

ライブの舞台となるのは元幼稚園の八角屋根の小さなホール。瀟洒な作りで、あらゆる方向に窓がある。この小さな部屋で顔を向かい合わせて演奏するベテランバンドを、いろんな角度、いろんな撮影技法を用いて撮る。それだけでもうドラマチック。

ライブは日中から夕方、夜にかかるまで行われる。窓から差し込む白い自然光はやがて暗闇に紛れ、暖色の室内光に変わる。バンドは和やかに演奏といつもより多いMCをこなす。時間の経過はまるで同じ部屋に居るかのような錯覚さえ覚えさせてくれる。メンバーと、古い知り合いだったかのような気がしてくる。

ドルビーアトモスの音の迫力、抜けの良さ。崎ちゃんドラムの最初の一音にガツンと来る感じはライブの臨場感そのものだったし、メンバーのガヤガヤMCもしっかり拾う。楽しい。

ただの無観客ライブ撮影にならず、場所とバンドの空気感をよりクリアに捉えて映画的に再現していたのは編集の妙もありそう。ここは松居監督のセンスがうなりを上げてるところか。
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