柏エシディシ

瞳をとじての柏エシディシのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.0
ビクトル・エリセ、長編としては31年ぶりの新作。
映画好きを名乗る以上、観ないという選択肢はない。
そして、こちらの過剰な思い入れを越えて想像以上に"映画の映画"であった。
早くも2024年ベスト級の名作。
タイトルの通り"まなざし"の映画。
エリセの過去作もヒロインの双眸が印象的であったが、本作も人物達の交わし合う視線やスクリーン越しにこちらを見ているのでは?と錯覚する眼差しに心が揺り動かされる。
映画を撮る事を諦めた主人公はそのままエリセその人が重なり、そしてまた再び、映画の奇跡に託そうとする展開に、監督の想いが重なる。
リュミエール兄弟、ドライヤー、ベルイマン、映画の歴史に言及しつつ、そもそも映画とは何であるのか?映画を観るという事は私たちにとってどういうものであるのか?そんな哲学的思考に導かれる。
記録としてはじまった映画は、思い出を綴じ込め、時代や国境すら越えて、今や私たち皆の記憶の集合体へ。
見る=観るとは、祈るという事、愛するという事と同義。
近年、止まる事のない呵責なき世界に抗うように映画の作り手たちが映画の映画を作るのは偶然が必然か。
私たちには映画が必要だ。
柏エシディシ

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