shunsukeh

希望のかけ橋のshunsukehのネタバレレビュー・内容・結末

希望のかけ橋(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

この映画では、次の三つのものが象徴的である。
一つ目はキャンディーの空き缶。ポーランドから日本赤十字に助けられ日本にやって来た少年は、これをとても大切そうに持っている。開けると、ふわっと白く光りながら舞い立つ粉のようなものが入っている。母国で辛い思いをしてきた少年はそれが舞い立つとき亡くなった母を思い出している。白く光るものは彼の母の遺灰なのではないだろうか。彼は、彼の受入れ先で暮らす日本の少女と心を通わせるようになり、堅く閉ざしていた心も開かれてゆく。
二つ目は折り鶴。少女が巾着袋の中に入れて持っている。心を込めて折ったものだろう。少年と連れだって海辺の断崖に行ったとき、巾着から折り鶴を出して地面に置くと、海に向ってフワフワと飛んで行った。少女と心が通じ合った少年は、キャンディーの缶の中の白く光るものを海に放ち、缶は少女に遣る。少年が母国に戻る時がきて、少女は少年からもらった缶を返す。少年が船の上で缶を開けると中には折り鶴が入っていた。
三つ目は海。折り鶴は海に向って飛び、白い光も海に溶けていった。母国に向けて海を渡る少年は少女の心のこもった折り鶴が入ったキャンディーの缶を携えている。
キャンディーの缶は大切なもの、心の支えをしまっておく場所、折り鶴は真心、海は人を隔てるとともに、それをたどると大切な人と繋つながれるものでもある。
心を通わせることの、尊さ、美しさ、そして、空間も、恐らく、時間さえも超えていくのだろうと感じさせてくれる映画だった。
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