囚人13号

PLASTICの囚人13号のレビュー・感想・評価

PLASTIC(2023年製作の映画)
1.5
これはちょっと擁護し難い。素人がプロから学ぶ機会を果たして興行化すべきなのか。

カットで時間はズバズバ飛ぶしこれ見よがしにフォローショットも多用されてるのだが、本質的な事を言うとこの主題で突き抜けた傑作は生まれないし、そもそも運命論的な男女を面白く撮れる人が現代にはいない。
唯一世界観を更に飛躍させることで新海誠だけは興味を示しそうな感じで、非現実的キャラクターが過剰なリアリズムを抱える展開は多分見るに堪えなくなる。

とはいえアニメーションで表現した方が音楽含め映えそうなのだけど、致命的なのが土地勘の鈍さです。愛知と東京という二つの地を決定的に隔てる感覚が交差点や地名入りの映画館(これらは一番安直な逃げでしかない)に頼りきって欠落しているうえ、台詞で全てを説明させてる。

伏見ミリオン座で観ててそのミリオン座が出てきた意図せぬメタと、恐らく自分が毎日利用している駅まで出てきた時は流石にオッと思ったが、制作が名古屋学芸だから多分内輪受けなので、こうした作り手側の快楽を消費者へ無造作に押し付けるような姿勢も居心地悪い。

それはムルナウや青山真治然り、尊敬ではなく自己誇示の道具として過去の映画作品を取り上げてしまう怠慢が侮辱ですらあって、とにかく宮崎大祐は何らかの形で青山真治に詫びなければならない。

あとはもう特に言うこともないのだけど、大前提として宇宙学的な確率で巡り会う云々以前に、そもそも音楽への核心に切り込んだ知性もなければ、逆に雑音になることの方が多かった気がする。ギターがエモーションの道具になってさえいれば…

スピードワゴンの小沢さんみたいな顔つきの彼には感情がない、唯一共感できるのは趣味が学友と語り合えないことくらい。まあ学生との共同制作、というより学生絡みの映画がここまで枯渇している実情を知れただけでも収穫だったと捉えるべきなのか。
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