アニマル泉

Bi Gan | A SHORT STORY/ビー・ガン | ショートストーリー/壊れた太陽の心のアニマル泉のレビュー・感想・評価

4.3
ビー・ガンの新作ショートフィルム。中国の猫グッズのメーカーからの依頼で作られた。
⚫︎黒猫の片目から深いOLで草原の低い滑走、疾走する黒猫の見た目である、ビー・ガンのナレーション、案山子に火をつける、鮮烈な炎、黒猫は案山子のボロをまとい黒帽子黒づくめの人間になって、この世の中で一番大切なものを探しに3人と会う旅に出る。

⚫︎ロープウェイでの黒猫男の移動。

⚫︎割れる鏡、黒猫男が映る、ビニールで覆われた廃墟の孤児院、ステンドグラス、AIの再生、飴をもらう、「こんにちわ、さようなら」

⚫︎室内、麺をすする女、記憶がすぐ無くなる、大切なのは手紙だが中身を覚えてない、カーテンが風で膨らむ、突然電灯が点いて揺れる、黒猫が片目を差し出して電気が点いたという、女が部屋の奥の扉を開けると部屋は列車の車両だった、開け放たれた扉から線路が走る光景が飛び込む圧巻の風景。

⚫︎悪魔に黒猫男は魂を売った、悪魔は手品師、劇場で支度をする悪魔、逆回転撮影で品々が悪魔に吸い付く、悪魔は土玉をこねて、これが宝物だと差し出す。

⚫︎黒猫の滑走、自分を拾ってくれた少女に誕生日プレゼントをしたかった、黒帽子を脱ぐと土頭に咲いた一輪の花、受け取った少女は「こんにちわ、さようなら」

⚫︎縦道の移動ショットに舞う黒帽子

ビー・ガンの主題やイメージが総動員されているが説話的な効果がない。バラバラに用意されてしまい作品が立ち上がってこない。ビー・ガンは「凱里ブルース」で鮮烈デビューを果たし、「ロングデイズ・ジャーニー」で進化する反面、断片化した。本作を見て次回作を撮れるか心配になった。大きな物語を作れるだろうか?カラックスを思い出す。ゴダール以降、物語は解体して、断片化やショートストーリーなど様々な方法で混迷化した。ジャームッシュは「パターソン」、ヴェンダースは「PERFECT DAYS」、ともに「日常の反復という物語」を見出して克服しようとしている。同じ方向に活路を見い出そうとしているのが興味深い。片やカラックスは「アネット」でまだ五里霧中の痛々しい戦いをしている。ビー・ガンの新作が心配だ。
カラースタンダード 15分。
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