ムック829

哀れなるものたちのムック829のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.1
天才外科医が死んだ女性の脳に幼児の脳を移植して、身体は大人、中身は幼児の女性が誕生。やがて彼女は急速に世界を知ることになる。

スゲー!万人に勧められるような映画じゃないけど、見終わった後の満足感、いや満腹感が凄かった。
ずっとアドレナリンが噴き出すような感じとでも言いますか、いい意味でもの凄く疲れましたね。
世の中、知らない方がいい事もあるよねっていう皮肉が、いかにもヨルゴス・ランティモス監督らしかった。

インパクト絶大だったのが白黒画面からカラーへの切り替え。そんなの一目瞭然なんだけど、その切り替わったシーンが強烈に猛烈で鮮烈!
映画史に残るワンシーン。例えるなら「寝起きでいきなり爆音のクラブにいる」そんな感覚。監督はしてやったりでしょうね。
このシーンがあまりにも衝撃的すぎて一気にテンションを持ってかれました。
閉じ込められていた世界からの解放をこれほどショッキングに描き出したのは、もはや天才と言わざるを得ない。

エマ・ストーンの演技も衝撃。身体は「入れ物」のような動きはもうそれにしか見えなくて。身体ギチギチで大変だったろうなあ。
もう身体を張るってレベルじゃないくらい身体張っていて、もはや畏敬の念が湧いてきましたね。

性を知り、驚きに満ちた世界をひたすら突き進み、どんどん知識と道徳心を吸収していく彼女。
世界を知った後の威風堂々とした歩き方には清々しさを覚え、エンドロールはまるでRPGをクリアしたかのような満足感がありました。
今までの人間の嫌な部分を浮き彫りにしまくる作風の、その一歩先へ行った強烈な映画でした。
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