倉持リネン

哀れなるものたちの倉持リネンのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0
🎬2024年劇場鑑賞3、11本目🎬

この映画を一言で言うなら「人間」か「愛」か「人生」か……いや、「哀れなるものたち」か。

「ロブスター」「聖なる鹿殺し」「女王陛下のお気に入り」等でお馴染み、ヨルゴス・ランティモス最新作。

……と言いつつ、実はランティモス作品と気付かないまま予告のビジュアルの良さでずっと心待ちにしていた本作。

鑑賞後に「あれ!?ヨルゴス・ランティモスじゃん!」と。まだまだですね🪿💭


という訳で結構長らく楽しみにしていたのだか、そんな上がり切ったハードルを冒頭の数秒、オープニングでもう超えてきて驚いた。


もうとにかく絵が良い!!!!

刺繍のオープニング、白黒からカラーになる映像、特に説明なく出てくる謎の生き物やシャボン玉ゲップ🫧装置、拘り抜かれた衣装や舞台……

何から何まで美しくて不思議で新鮮で面白くて、鑑賞中の多幸感がハンパなかった。


そしてそんな美しい映像に負けない俳優陣の怪演に次ぐ怪演!

エマ・ストーン、ウィレム・デフォーの演技が凄まじいのは勿論のこと、個人的には特にマーク・ラファロに驚かされた。

ちょっと本当に完璧すぎる映画だと思う。


これはランティモス監督の作家性とも言えるが、グロテスクな要素を持ちつつも画面上で必要以上に凄惨な描写をしないのが好きだ。

事前情報で言われてた通り奇妙だしエログロ要素もあるが、それら……特にグロテスクな要素は物語上必要な場面でのみ効果的に使われていて、悪趣味な感じがなくて良かった。

ゴッドの傷もすぐ見慣れるし、ベラの首の傷が映ったときはグロいどころか息を飲むほど美しいと思った。

クリーチャー🪿🐕の造形も(やってることはエグいが見た目は)シンプルで、無駄にグロい縫い目とかもなくあくまで「そういう存在」として描かれているのがかなり好きだった。

別にグロい映画も嫌いじゃないが、この映画のテーマ的にもこの塩梅で大正解だったと思う。

とにかく作品通して不快な点が見当たらない。


正直こう言う世界観重視の作品はなかなか好きになれないことが多く、ティム・バートンやギレルモ・デル・トロ作品なんかも敬遠してきた(好きなものもある)のでここまでドンピシャハマる作品に出会えて嬉しかった。


先行公開で1週間くらい早く観れたのだが、その時のシアターが何故か映画館でいちばん広い部屋&お客が私含めて3人しかおらず……こんなに贅沢な鑑賞体験は無いと思った。

ちなみにその後普通に上映が始まってからも見に行ったが、そっちの方が狭いシアターだった。
先行上映の入りがもっと多ければ……と悔やまれるが、大きいスクリーンで見れてラッキーだったな。
倉持リネン

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