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名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊のkuuのレビュー・感想・評価

3.8
『名探偵ポアロ ベネチアの亡霊』
映倫区分 G
原題 A Haunting in Venice
製作年 2023年。上映時間 103分。
アガサ・クリスティの生んだ名探偵エルキュール・ポアロが、イタリアの水上都市ベネチアを舞台に不可解な殺人事件の解決に挑む姿を描いた本格ミステリー。
ケネス・ブラナーが監督・製作・主演を務めた『オリエント急行殺人事件』『ナイル殺人事件』に続くシリーズ第3弾で、今作でもブラナーがメガホンをとり、自らポアロに扮した。
原作はクリスティの小説『ハロウィーン・パーティ』(インスパイアされたが的確かな)で、舞台はイギリスからイタリアのベニスに変更されている。
物語の鍵となる霊媒師レイノルズをミシェル・ヨーが演じる。
そのほかの共演にジェレミー・ドーナン、俳優でコメディアンのティナ・フェイら。

ミステリアスで美しい水上の迷宮都市ベネチア。
流浪の日々を送る名探偵エルキュール・ポアロは、死者の声を話すことができるという霊媒師のトリックを見破るために、子どもの亡霊が出るという謎めいた屋敷での降霊会に参加する。
しかし、そこで招待客のひとりが人間には不可能な方法で殺害される事件が発生。
犯人が実在するかさえ不明な殺人事件に戸惑いながらも、真相究明に挑むポアロだったが……。

アガサ・クリスティのエルキュール・ポワロは永遠のキャラクターなんて個人的には思う。
でも、アガサ・クリスティ自身は、エルキュール・ポワロってキャラにうんざりしていたそう。
出版社からの圧力でシリーズを書き続けていたなんてクリスティの孫のマシュー・プリチャードさんが英誌ラジオ・タイムズに明かしてた。
とは云え、彼女の信じられないような(短い)物語は、多くの作家や監督に、繊細でありながら生き生きとした人間味のある殺人物語やホワイダニット(ミステリー用語で『Why done it』をカタカナにしたもので、なぜ、その犯行を行ったのかちゅう犯行動機の解明をメインに据えたミステリーを指す)を語り続ける機会を与えた。
エルキュール・ポアロの映画やシリーズを何度も観たり読んだりした。
どれも尊敬に値し、独自のスタイルと "個性 "を持っている。
しかし、ケネス・ブラナーが手がけたエルキュール・ポワロは、原作に敬意を払いつつも、新鮮かつ上品なスタイルで劇場に登場し、彼の3作がアガサ・クリスティ・リメイクの新時代を築いたって云っても過言じゃないかな。
ケネス・ブラナーに感謝。
あなたは犯罪とミステリーを愛する人々に、どんな喜びをもたらしてくれることだろう!
今作品ではケネス・ブラナーは、エルキュール・ポアロとのちょっと変わった体験へと誘う。
今作品は、前2作『オリエント急行殺人事件』『ナイル殺人事件』と比べると、そのペースにユニークさがある。
しかし、この3作目は、アガサ・クリスティとその登場人物たちが持ち運んでいたもの、特にその多くを提供してくれる。
また、超自然的な出来事、霊、悪魔、そして、観てる側のそばには鮮明には見えない別の次元があるのではないかという疑問というトピックはうまく扱われている。
ホラー・タッチもちょうどいいかな。
やりすぎはしないが、それが襲ってきたときには、ちょっとした衝撃と恐怖の瞬間が、何ちゅうクオリティか。
すべてのフレームとシーンで巧みな演技。
善きな演出に加え、ブラナー自身もこの共感できるキャラを見事に演じている。
アガサ・クリスティの物語が好きなら、エルキュール・ポアロが好きなら、そして超常現象に対するすっきりとして上品なアプローチが好きなら、好まれる作品やとは思います。
そして、その鋭い頭脳と時に冷静なアプローチで破滅的な状況に立ち向かうポアロの人間性を忘れてしまったら、彼が『キャサリン』を思い出した時の感動を思い出してほしいかな。
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