すえ

ルクセンブルク、ルクセンブルクのすえのレビュー・感想・評価

4.3
記録

親の仕事についてゆき、6日ほど前から台湾に。そのせいでここ最近映画を観れていなかった、寂しくもあったが、映画以外の発見もたくさんありとても良い経験になった。

鑑賞した劇場は、台北之家という建物にあるミニシアター、光點電影院。台北之家は、台湾における旧アメリカ大使館で、とても歴史の深い建物。2000年から台湾の巨匠、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)プロデュースのリノベーションが行われ、2002年にオープン。光點生活という雑感店には、DVDが並び、侯孝賢のコーナーまで設けられていた。映画好きにはたまらない空間だった。

光點電影院という劇場は、もうなんか日本と違いすぎて面白かった。まずシアターが1つしかない、そしてその前で1人の店員らしきおじさん(あまりに一般人すぎて初め分からなかった)が座っていてチケットを確認、そして入場という方式。席は自由席で、シアターの中(後ろの方)にトイレがあり、そんなところも日本と違うなぁと1人でニチャアと笑顔になってしまった。日本の学生証を見せたら学生料金にしてくれたのも嬉しかった、台湾人は親日が多くてやっぱり優しい。
以上、個人的な話。

なんとも不思議な映画だった、前に進むわけでも後ろに戻るわけでもない。単にコメディとして楽しむのが良いのかなぁ、移民問題などを抱えるルクセンブルクという国を扱うので、そういった社会問題の描写も含まれており見応えがあった。ウクライナとルクセンブルクの関係性にはあまり明るくないが、この映画が描かれた時代にはウクライナからルクセンブルクの移民が多かったのかな?父への憧れと他国への憧れが対比して描かれていたとも考えられそう。

主人公たち双子の精神性は、まるで大人になっていないように描かれている。幼少の記憶を頼りに美化された父への憧れを捨てることで、エディプスコンプレックス的な大人への羽化を果たしたのではないか。一方は本当の父を目撃し憧れを捨て、他方は父への憧憬を捨てきれていないようにもみえる。ラストはややスッキリしないようにも感じるが、これで良いと思う。最近の映画は少し語りすぎだと思う。

単なるコメディとしてもめちゃくちゃ面白かった、シュールな笑いというか、フフってなる部分が多くて観ていて楽しかった。現地の中国人のおばちゃんはゲラゲラ腹抱えて笑ってて、これも映画館の醍醐味だよなぁと耽っていた。

冒頭の幼少期のシーンがあまりにも完成度が高すぎて、一瞬で引き込まれた。ショットの完成度が高すぎる、超濃密な空気を捉えていて、ため息が出るほど美しかった。

台湾でこういう良い映画に出会えるとは、映画人生においてかなり重要な経験。日本で上映されるかは分からないが、また日本語字幕版でも観たい。ある意味一生忘れられない映画だろう。

2023,303本目(劇場44本目) 11/19 光點電影院
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