Fitzcarraldo

イ・チャンドン アイロニーの芸術のFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

4.4
フランスのドキュメンタリー作家アラン・マザールによるリモート作品。

イ・チャンドン
「正直、大変でした。私はもともと、カメラの前に立って自分や自作について説明するのが苦手です。このドキュメンタリーは、監督と意思の疎通をはかりながら自然な形で撮れるだろうと期待して始めたのですが、とにかく決められた質問をいただき、マザール監督が決めた位置に身を置いて、リモートで答えるという方法になりました。あまりにも照れくさくて、恥ずかしくて、いまだにちゃんと見ることができていない」

照れくさいと言う割に、めちゃくちゃ名言連発してたけど…次から次へと出てくるから、覚えようとしても無理だった。配信かソフト化したら見返して、ほとんどの文言をメモしたいと思う。



イ・チャンドン
「韓国社会は常に開発を進め、経済成長を目指し、空間そのものがめまぐるしく変わり続けている。それはアイデンティティーの混乱にもつながっていくように思います。昔の映画館が消えるというのは、とても小さな話に聞こえるかもしれませんが、映画人にとっては、アイデンティティーの基盤まで失ってしまうように感じられることだと思っています」

日本も全く同じことになっていると感じる。多くのミニシアターが消えてしまった…CINEMA RISEだけは何としても残してほしかった。ライブハウスとして再開するのは残念でならない。


イ・チャンドン
「小説を書いていた当時は、韓国社会の姿を可能な限り、ありのまま書こうと努力しました。いま映画を撮っている時も同じです。登場人物の物語と現実の間には、密接なつながりがあるべきだと信じているんです」

ここを信じるのか蔑ろにするかで大きな差が、違いが生まれると思う。

野島伸司の脚本によるテレビドラマ『何曜日に生まれたの』は、まさに蔑ろにしている好例だと思う。飯豊まりえ演じる引きこもりの女の子をネタに、溝端淳平演じる作家が漫画原作を執筆するというストーリーラインなのだが…この作家が飯豊まりえにプレゼントしたスマホから常時接続の盗聴をしてネタを掴むという…この無茶苦茶な設定にシラけてしまう。この盗聴に関して何の説明もない。とにかく聞きたい時に、いつでも自由に聞くことができる。これなんなの?スマホの中にミニ盗聴器が仕込まれているの?だとしても、それ何キロまで対応してるの?めちゃくちゃ遠くでも聞けてるけど…さらに盗聴器の電波とスマホの電波は干渉しないの?
盗聴器じゃなくて、いつでも盗聴できるそういうアプリがあるの?ないだろ、そんな怖いアプリ…

この時点で途端に見る気が失せる。
密接なつながりないよね?

イ・チャンドン
「登場人物の物語と現実の間には、密接なつながりがあるべきだと信じているんです」

私も信じたい。
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