スギノイチ

絞殺魔のスギノイチのネタバレレビュー・内容・結末

絞殺魔(1968年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

個人的な話をしちゃうと、分割画面が好きじゃない。
呑気に暮らす被害者と冷淡に殺人に向かう犯人が同じ画面上に並行して存在する、というビジュアルは一瞬だけ面白いけど、これが何度も続くのですぐ飽きるし、想像の余地が無さ過ぎて冷める。
やたらキャラの濃い連中が次々と出てくる楽しみはあるし、ヘンリー・フォンダの渋い演技は良いんだけど…

犯人が捕まり、尋問シーンが主となる後半からは、ガラッと演出のトーンが変わる。
途中から大島渚の映画が始まったのかと思った。
前半の様な派手な画面遊びは無くなり、長回しやフラッシュバックなど、不安感や疲労感を煽るような演出が増えて、映画の雰囲気も陰湿なトーンに変わっていく。
エンドロールに犯人の息遣いを被せ続ける手法は『10番街』でもやっていたけど、ハアハア声が耳にこびり付く様で非常に不愉快な後味が残る。

尋問する側ながら、狂気の世界に触れつつあるヘンリー・フォンダの演技も良いし、犯人役のトニー・カーティスが変貌していく様子も鬼気迫っていて惹き付けられる。
でも、そこに至るまでがちょっとたるい。ていうか、そもそも「二重人格」ってどうなのよ。
古い映画とはいえ、68年じゃもう陳腐だろう。
その部分に関しては創作らしいが、半端なミステリー要素が返って邪魔だ。
見所はあくまで演出博覧会だったのかもしれないけど…
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