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ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズのkuuのレビュー・感想・評価

3.7
『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』
原題 Five Nights at Freddy's  
映倫区分 G
製作年 2023年。上映時間 109分。
劇場公開日 2024年2月9日。
世界的ヒットを記録した同名ホラーゲームをブラムハウス・プロダクション製作で映画化した。
廃墟と化したレストランを舞台に機械仕掛けのマスコットたちが巻き起こす恐怖を描いたホラー映画。
ジョシュ・ハッチャーソンが主人公マイクを演じ、エリザベス・レイル、マシュー・リラードが共演。
原作ゲームの開発者スコット・カーソンが製作・脚本に名を連ねる。

弟が謎の失踪を遂げ、事件の悲しい記憶から立ち直れずにいる青年マイク。
妹アビーの親代わりとして生計を立てるため必死に仕事を探す彼は、廃墟となったレストラン『フレディ・ファズベアーズ・ピザ』の夜間警備員として働くことに。
『モニターを監視するだけ』という簡単な仕事のはずだったが、妹を連れて深夜勤務に就いたマイクは、かつてそのレストランの人気者だった機械仕掛けのマスコットたちが眼を怪しく光らせながら自ら動き出す姿を目撃。
マスコットたちはかわいらしい姿から一転して凶暴化し、マイクや廃墟の侵入者を襲い始める。

余談から始めます。
フォクシーは骨格のような構造をしている。
そのため、全身アニマトロニクス人形として作られた。
因みにこのアニマトロニクスってのは、アニマトロニクスは動物や架空生物などについてその形と動きを精巧に再現するロボット、またその製作技術のこと。代表的なものはディズニーランドの『魅惑のチキルーム』『カリブの海賊』などがあるラス・ウォルコとジム・ヘンソンのクリーチャー・ショップの人形遣いたちによって演じられたそうな。
フォクシーが歩くショットでは、6人もの人形遣いが彼の全範囲の動きを達成するのに必要だったんだとか。
また、今作品を観て、ふと思い出されるのはニコラス・ケイジ主演の『ウィリーズ・ワンダーランド』 (2021)。
今作品は『ウィリーズ・ワンダーランド』チャック・E・チーズ型レストランで人々が憑依したアニマトロニクス・キャラクターに襲われるというものにインスピレーションを得たプロットを持ってるそうで納得。
扠、今作品は原作がゲームとのこと、個人的にはゲームの好みはかなり片寄ってて時代遅れ傾向があるしドナいなんかなぁと思いつつ鑑賞しました。
ゲームを知らないですが、映画の興味の方がはるかに大きかったし、長編映画として、またホラー映画としてどのように映るかを気にして今作品を観ました。
ですから、映画化としての忠実さよりも、先にも書い『ウィリーのワンダーランド』や2019年の『バナナ・スプリッツ・ホラー』と比べることに興味があったかな。
今作品はあらゆる点でとても楽しく、切望するジャンルの味を再現していた。
正直、トーンで、まとまりで、テンポで、そして恐らく、このシリーズが(ゲームをよく知らないでも)よく知られている主要なイメージ(とゲームメカニクス)をフルに活用していない一方で、この作品が歩んできた道のりにありきたりに感じてしまうことは否めなかったし。少し驚かされた。
レストランやプレイハウスのホールをうろつくアニマトロニクスは確かに味わえるし、照明、撮影、編集、スタントやエフェクトの賢い使い方によって、これらのシーンは有意義に不気味で不吉なものとなっていたのは確かです。
しかし、プロットには、ゲームにまつわるアレコレが活かされているようやけど、織り込まれたさまざまな要素がアンバランスで扱いにくい印象でした。
ストレートなホラースリラー、サイコスリラー、超常現象ホラーといったテイストが感じられるが、それと同じくらい、あるいはそれ以上に、主人公マイクの過去のトラウマ、粗雑な職歴、妹との困難な関係など、悩みを抱えた私生活の掘り下げに時間を費やしている。
確かにこれらはすべて完結したストーリーの一部やろうけど、前の方では話が混乱しているように見え、後ろの方では脚本がさまざまな断片をきれいにまとめようとするあまり、詰め込みすぎて窮屈になっている感があった。
これがゲームシリーズと関係があるのかないのかは別として、今作品はあまりにも多くのことをやろうとしすぎており、いくつかの側面を省くことで利益を得たのではないかと思う。
しかし、こうしたことを差し引きしても、概して今作品はシャープで、期待した以上に純粋に楽しめた品やった。
あらゆる角度から、この映画化にどれだけの配慮がなされたか、また、この映画化をベストなものにしようと、あらゆる人にアピールできるようなものを作ろうと努力している真摯なモンがわかる。
また、フレディとその仲間たちが際立って見えることに疑いの余地はない。
スタント、エフェクト、アートディレクションは超一流で、ゲームを多少なりとも知っている人なら一瞬でわかる美学に生き生きとした命を吹き込んでいるんじゃないかな。
ジョシュ・ハッチャーソン、エリザベス・レイル、そしてパイパー・ルビオなどが、それぞれのキャラとその進行に、意味のある重みと人間的な心を与えていました。
物語がアイデアの間で揺れ動く中でも、俳優たちがアンカーの役割を果たし、困難と思われる状況の中でもタイトルを安定させていたかな。
『ウィリーズ・ワンダーランド』が臆面もなくホラー・コメディを繰り広げたのに対し、『バナナ・スプリッツ・ホラー』はそれとは趣向を異にし、母と子の関係や幼少期の無邪気さについて真摯に側面から探求した。
ニコラス・ケイジ主演の騒々しい作品よりも地に足がついた真面目な作品であり、ハンナ・バーベラ主演の作品よりもバイタリティに溢れている。 脚本陣は、ユーモア、バイオレンス、ハートフルなビートをうまく使い分けながら、融合したストーリーと脚本を練り上げてた。
このジャンルの純粋な観客にとっては、この3本の中で今作品が個人的には最も純粋なホラー体験ができるとさえ云える。
ゲームにどの程度親しんでいるかは別として、誰でも楽しめる作品だと思います。
ささやかな喜びである作品でした。
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