とーるさんし

シルヴァー・シティー・リヴィジテッドのとーるさんしのレビュー・感想・評価

3.2
例えば線路を映したショットは、通常は列車が奥から手前に走ってくるようにカメラを置くものだが(リュミエール『ラ・シオタ駅への列車の到着』)、本作では真逆の位置で手前から奥へ列車が走っていく。前者のカメラ位置であれば、線路を横切る人と列車の位置関係で何かサスペンスが生じるだろうが、ヴェンダースはそうした普通の物語を拒否し、あえて反対の位置にカメラを置き、線路を人が横切った後に列車が見えて通過していくショットにする。そして列車が通った後も、何かが起きるのを期待したかのように暫くカメラを回し続ける。

物語から風景を設定するのではなく、風景を見守り、何かが起きる(物語が生じる)のを待ち続ける倦怠。そこに映画性を見出すこと。一般的な物語を解体し、風景を見守ることで世界に新たな別断面の物語を探求する姿勢。ヴェンダースの作家性は既に色濃く表れている。本作など初期短編を観ることで彼が3D表現に拘る訳も多少理解できた気がする。
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