グラビティボルト

貴公子のグラビティボルトのレビュー・感想・評価

貴公子(2023年製作の映画)
3.4
凄いアクションや暴力に頼った、平場の弱い映画がニガテなので限界まで期待値を下げていたぶん、想像より面白く観れた。
ラストがやたら軽快なのが意外。
巻き込まれ型サスペンスの割には主人公を巻き込む事態が発生するのが遅いとか(お母さんの寝たきり描写のつまらなさよ)、クセのある人物を並べ過ぎて暴力が停滞するとか(タランティーノ憧れがボルテージを下げる悪癖)、理想的なジャンル映画じゃないけどボーっと観る分には楽しいと思う。

三池崇史だったらもっとタイトに面白い映画にしていただろうな。
「ブレッドトレイン」といい、三池崇史本人が燻っている間に三池的な闇鍋映画を海外の作家が撮るようになっているのが興味深い。

せっかく主人公がボクサーで、体力的に優れてる設定を用意してるのに
常に余裕そうな貴公子と対比させる為なのかずっとオドオドしてるのが残念だし、終盤見せ場の乱闘シーンでも怯えっぱなしでただの守護対象でしかないのが残念。
あと、肝心の乱闘も殺陣が不明瞭な
ショットばかりで弱い。

しかし、T2の液体金属のアイツみたいにやたらしっかりしたフォームで追いかけてくる貴公子が面白かったり、印象的な細部は確かにあった。
あと、シナリオで適度に驚かせようとしているので、ギリギリ興味が無くならなかった。
一番のサプライズ要素が、多数の敵に囲まれても鏖殺出来る貴公子の戦闘力というのも、ハッタリが効いている。

ショットが弱いのが一番の問題だと思う。
平場は勿論、アクションでも脳裏に残るショットが無い。
「犯罪都市3」といい、ここ最近の韓国映画は画のパワーが弱くなっていると思う。