カリカリ亭ガリガリ

戦慄怪奇ワールド コワすぎ!のカリカリ亭ガリガリのレビュー・感想・評価

5.0
素晴らしい……超面白かった。今8年ぶりにコワすぎの新作を作ることの意義を感じたし、初日の満席の劇場の一体感・熱量も相まって、あるシーンで泣いた……そして白石さんの怪異への眼差し、虐げられし者への眼差しというものに、やっぱり信頼があった。

ファンとしても複雑な想いで観ていた『超コワすぎ』の極悪工藤への、作家自身からのアンチテーゼでもある。旧劇へのアンチテーゼとしてのシン・エヴァみたいな?
ってよりも、暴力の加害性そのものに加担し続けてきた白石さんの作家性=工藤とかその他白石作品のエクストリーム主人公たち=白石晃士自身への断罪、それがしっかりとエンタメとしても機能している辺りに誠実さすら感じた。

コンプラ云々で市川に押され気味な工藤とか投稿者にキモがられる工藤とか以前に、クライマックスの対峙で自分(白石晃士)の中の怪物性にフィクションとして、エンタメとして決着をつける展開がアツい。
そしてこの作品のナラティブそれ自体が、加虐性への批判とトラウマ脱却リベンジムービーとなっていて、それは終始ずっと通底されている。最終的に巨大な◯◯が◯◯を◯◯する画が出てきて、その画の「こんなの見たことない」という新しさと、ホラーという表現だからこそ出来る救いの両立が、白石晃士の作法だ!とアガる。
たとえば、『超コワすぎ』の2・蛇女の回は、人と人が関係することの儚さと希望が描かれていて、ギミックとかテクニックとかそれだけじゃない、白石晃士という人の作家性をそこに見る。今回も見た。それが見える白石晃士作品が、自分は好きだ。

(『オカルトの森へようこそ』に感じられた白石晃士マッシュアップ的既視感というか、自己表現の更新を目的にはしていない"メジャー盤"的な作法にあまりノレず、正直今回のコワすぎも「今更やる必要あるのか……」「いや死ぬほど楽しみだけど……」と不安多めのアンビバレントだったのだけど、上記の理由も含めて、そんな不安が吹き飛ぶ"ホラー映画"だったことが本当に嬉しい)

無印コワすぎ最高傑作『トイレの花子さん』をハイパーグレードアップしたかのような娯楽性に加わって、久々に出てくるキャラが全員いい。
ってか、藤本タツキ先生が『コワすぎ』からパクった幾多の要素を、今度は『チェンソーマン』からパクり返しているのが面白かった。

市川の「段差あります!」でも思わず泣きそうになってたら、一緒に観た友人もそうなってて、なんか、そういう良さなんだよなぁと、しみじみしてしまいました。

白石さん、『ブルータル・ジャスティス』好きなんだね!そのまんまやってたじゃん!俺もだーいすき!