らんら

映画ドラえもん のび太の地球交響楽(シンフォニー)のらんらのレビュー・感想・評価

3.8
映画作品としての質が高く、素敵な作品。
ドラえもん映画としては、アドベンチャー感や派手さにやや欠けます。

出てくる舞台も大体2箇所くらいなので、画的な刺激も少ないです。
子どもは退屈するかもしれません。
悪役キャラみたいなのも本作には出てこない


しかし1本の映画作品としてとても良く出来ています。

まず「音楽」というテーマ選びが凄くいい。
音楽の存在理由とその大切さ、人間と常に共にあってきた「音楽」の歴史を丁寧に描いていて奥が深い。

特にオープニングと、序盤の日常パートは秀逸です。

オープニング映像で泣いたのは、新恐竜以来です。 太古から現代までの「音楽」をとても素敵なアニメーションで表現しており、感動しました。

序盤では、日常の中に溢れる「音」や「音楽」をさりげなく映し、音楽と私達人間の繋がりを感じさせてくれます。

いつものわんぱくな雰囲気とは違い、演出がロマンチックで美しかったです。
絵になるカットがとても多くてセンスを感じました。

そして本作は、要素がとても上手くまとめられている。

ただでさえドラえもん映画は「友情」「タイムパラドックス」「ひみつ道具」「ゲストキャラのストーリー」などと描くことが多くて
ごちゃごちゃしそうなのに、
本作には「音楽」という今までにない要素も加わっています。

しかしそんな沢山ある要素が、本作ではとても綺麗にまとめられており、展開もかなり分かりやすい。

「敵」であるウイルスの設定や、ゲストキャラ達の設定、音のない宇宙空間という舞台、
のび太たちの友情、ドラえもんとのび太間の愛情、そしてひみつ道具の扱い、全てのバランスが絶妙で、噛み合ってる。

どの要素も中途半端にならずしっかり描き切っています。

特にひみつ道具の「あらかじめ日記」に関する展開は2転3転してとても面白かった。
伏線の回収が美しい。
ラストにはかなりグッときました。

のび太の楽器が、学校のリコーダーなのもかなり良い。確かに下手っぴなんだけど、その音色はどこか白鳥の声のように聴こえるんですよね。本作では白鳥が重要なモチーフになっているので狙った演出なのだと思う

音楽がテーマなだけあって、全編通して劇伴がとても良い。メインの交響曲に日常の音たちが取り入れられているのも愛を感じる
個人的にウイルスが登場する度に流れる音楽がめちゃくちゃ好きでした。

タイトル回収も素晴らしくて鳥肌たった。

子ども向けジャンルの中でも群を抜いて質が高く、子どもだましじゃない。大人が観ても度肝を抜かされます。

何十年経っても未だに子どもから大人まで、強く支持されている理由が改めて分かりました。

隠れた名作になりそう。
令和のドラえもん映画の中では一番好きな作品になりました。

あと最早当たり前になってきているけれど、作画の質がめっちゃ高い
らんら

らんら