CHEBUNBUN

アンヘル69のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

アンヘル69(2022年製作の映画)
3.0
【痛みを虚構に流し込む】
山形国際ドキュメンタリー映画祭2023のラインナップが発表された。その中にコロンビア映画があった。テオ・モントーヤ監督はメデジン大学視聴覚コミュニケーション学科卒業後、デスビオ・ビジュアルという実験映画やドキュメンタリーの制作会社を設立。2018年に作った『Son of Sodom』が評価された。『アンヘル69』はその長編版である。これが独特なアプローチであった。

ホラー映画は社会の中にある陰惨さや怖さ、痛みを虚構という器に流し込むことで映像言語に落とし込む側面がある。本作はB級ホラー制作の外側にある痛みの源流を辿る物語となっている。小さなフレームの中に暴力のアーカイブを映し出す。そして霊柩車が映る。薬物過剰摂取によって亡くなった映画の主演だ。性的マイノリティの人々にインタビューをする中で、政治的問題や社会によって抑圧される者の痛みが炙り出されていく。本作が特徴的なのは、棺桶のような物理的な死を表すものと対比するように映画館に『ブンミおじさんの森』のような黒い存在を登場させたり、 劇映画のような死体配置を映すしている。虚構/現実、物理/仮想の境界線を曖昧にするように表現を変えながら死を捉えていくことによって、マイノリティの痛みを強調していこうとするアプローチが興味深かった。コロンビア史の文脈を知るともっと掘り下げることができそうな作品に感じた。

★山形国際ドキュメンタリー映画祭2023徹底解剖【che bunbun/透明ランナー】※再放送▼
https://m.youtube.com/watch?v=zMTJ6wnR8AU&t=1441s
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