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市子のkerokeromanのネタバレレビュー・内容・結末

市子(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

雰囲気と空気の重さ、映像のしっかり撮っている感じ、ビジュアル面に関してはとてもよかった
また、演技面に関しても

特に髪の毛でそのキャラクターがどんな境遇にいるのか、というのを表現するこだわり(?)に関しては他の映画とは比べ物にならないくらいのエネルギーを感じた

が、そういった良さ程、見終わった後に、心に響かなかったのはなぜなのだろうか?

・所々の詰めの甘さ、例えば月子の使用していた生命維持装置は恐らくリースだったろが、その処理はどうしたのだろう?小泉が「大変だった」とか言ってたけど、そんなセリフの一言で片づけられるほど安易なことではないような気がする

・そして更に甘いのがその小泉の事件、どう考えたって証拠が残りまくっているのに警察にばれない
しかも大の大人を線路まで運んで横たわらせるのに舞台になった町で誰からも目撃されずに成し遂げられるわけは絶対になく(例えば線路が団地の目の前にあるという描写などがあればまだしも)

・それ以外にも警察が無能というか、何もやっていない疑惑しかない

・転落した車に乗っていたのは二人、つまり市子以外の二人だったみたいだがそれも果たしてどうやったのか?
自殺したがっていた北見冬子はともかく、北秀和のほうはすんなり死を選ぶということはないはずで

・あまりにも報われない三枚目北秀和

・市子の人物像の一貫性のなさと情報の整理のヘタクソさ
これは狙ってやっているのかもしれないが、それにしても市子という人物のちぐはぐさが目立つ
例えば幼少期に胸を自ら見せることで追い払ったりしていたけれど、その性的な部分に関してその後の話に繋がってくるところがなく、無駄な情報にしかなっていない
例えばもっと男を手玉に取るような魔性のエピソードなどがあればわからなくもなかったろうが
すさんだ家庭環境ということを表したいのであればあの形でないほうがむしろいいはずだと思う
こういうところがいくつかあった

・不幸の詰め合わせみたいな市子に対してどういう気持ちを抱けばいいのかわからない
もちろんこれも狙ってやっているんだろうが、あまりうまくいっている感がなく、役者陣の熱演がむしろ脚本・演出によって空回りにされてしまっている気がした

・もっと行間を埋めるシーンを作ったほうが伝わるものが多かったのではないか?
田中宗介のエピソードって必要だったのか?あの時間軸は北秀和一人でよく、その分をもっと別にあてがえばよかったのではないか?
「幸せだったころもあった」わけだからそういうところとかね

・例えばアクション映画に細かい話の整合性なんか期待しないから上記のようなことがあってもあっさり見過ごせるんだけど、しっかりと人を描こうとしているのであろう作品でこの感じはちょっと残念

素材はいいのに、作り手が重いものを・心に響かせるものを作ろうと要素を詰め詰めにした結果、詰めの甘さが露呈しまくったひじょーーーに残念な作品になってしまった感じ
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