Omizu

Holly(原題)のOmizuのレビュー・感想・評価

Holly(原題)(2023年製作の映画)
3.4
【第80回ヴェネツィア映画祭 コンペティション部門出品】
『Home』フィーン・トローチ監督作品。学校で発生した火災の際、偶然その日にいなかったがために「奇跡の子」と持ち上げられるいじめられっ子ホリーとその教師を描いた人間ドラマ。

ベルギーのフィーン・トローチ監督はこれが長編6作目の中堅のようだ。前半は傑作を期待させられるが、後半になって失速。もったいない。

偶然の出来事によって勝手に期待を寄せられる少女の心、そして彼女を持ち上げる教師の両面から人の心の傷跡を描いている。

「魔女」と呼ばれ虐められる描写は心が痛い。普通にキレイな子ではあるけど繊細すぎるんだね。前半までの神秘的な演出はとてもよかった。ヴィジュアル重視のヴェネツィアでウケそうな映像ではある。

しかしそれが続くと少々食傷気味。後半はそこまで話が動くわけではないのでもっと展開を持たせてほしかった。映像のキレイさだけで持つのはせいぜい一時間。そこからは展開力でみせていく必要があると思う。

ホリーも教師もそこまで深く掘り下げられておらず残念。スピリチュアル人間ドラマとしてポテンシャルはあると思うがキャラクター描写が薄い。個人的には自閉症の友だちと主人公の姉が消化不良なのが気になる。そこまで深く描かれていないのにラストシーンが彼で終わるのはなんだかなぁ。

まぁただ安定して見続けられるクオリティではあるかな。持ち上げられた少女の心理、彼女に期待する人々の心の傷をスピリチュアルに描くという視点自体はよかったと思う。
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