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狂ったバカンスのkojikojiのレビュー・感想・評価

狂ったバカンス(1962年製作の映画)
3.7
今の感覚で、過ぎ去った若い時代を振り返ってみると、実に馬鹿馬鹿しいことをやってきたものだと思うことがある。思い起こすとあまりに酷くて赤面してしまうようなこともあった。

この映画の不良たちも、薄っぺらで、単純で不良とも呼べないような連中で、彼等の言動そのものがちょうどそんな青春時代そのもののように見える。
1960年代の青春。「堕ちた世代」と映画の中では言っている。
この時代の日本映画を観てもこんな若者たちがたくさんでてくる。そんな時代だったのかもしれない。歯が浮いてしまうような、恥ずかしいような、バカバカしい若者たち。

そんな連中の中に、決まってこの映画のカトリーヌ・スパークのような女の子がいる。
彼女のこの映画の設定は16歳。とても見えないが、実年齢も16歳から17歳。さすがイタリアと驚く。高校生の年代でこんな遊びはないだろう。

カトリーヌ・スパーク。
1960年代を席巻した小悪魔女優。
16、17歳の時この映画を観ていたら、やはり彼女の魅力にはまっていたに違いない。
つかみどころがないのに、何故か要所要所は抑えられて、いつのまにかトリコになっている。
そう言えば、この年代の恋愛はそんなもんだった。そんな子がいるんだ。自分の妄想をどんどん膨らませてくれるような女の子。

主人公のおじさんアントニオはプレイボーイを自認している。それだけにこの年でも彼女の術中にはまって、妄想を膨らませている。


ミラノに住む彼は、夏の終わりの週末、離れて暮らす息子のもとへ車で向かう途中、不良の若者たちのグループに遭遇する。彼はすぐにその中にいた美しい少女フランチェスカ(カトリーヌ・スパーク)に心を奪われ、彼らのバカンスに巻き込まれていく。
彼は居場所もないのに、偶然が重なり何故か彼等から離れられない。しかしそれも、彼がフランチェスカのトリコになってしまったらだ。

この映画のカトリーヌ・スパークは、代表作「女性上位時代」よりはるかに可愛くて、魅力的。観ている私も、いつのまにか完全にアントニオの視点になっている。

青春映画なのだが、中年のおじさんの視点で描いているだけに、彼等が眩しく、輝いて見える。彼等が去った後は過ぎ去った青春のように何故か切ない。

音楽はエンニオ・モリコーネ。さすがに一味違う。

#1450 2023年482本目
1962年 イタリア🇮🇹映画
監督:ルチアーノ・サルチェ
脚本:エンリコ・シエッラ
音楽:エンニオ・モリコーネ
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