みゆ

アイアンクローのみゆのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.7
2024.04.22(64)
劇場・字幕


うちの父はテレビでプロレスを見るのが好きで、私も子どもの頃はよく見ていた。だから「アイアンクロー」という技のことは当然知っていたものの、フォン・エリックファミリーの試合を見たかどうかは記憶になく、そんな状態で見ても大丈夫かなと少し不安だった。

結論から言うと、ある程度当時のプロレスについて知っていた方がいいが、知らなくても映画そのものについての理解は問題ないと思った。

私がよく知っているプロレスラーが2人出てきて、そこは個人的に盛り上がった。

いや、一番盛り上がったのは、冒頭でザック・エフロン演じるケビンが起き上がるシーンだった。ものすごかった。ホントすごかった。人間の身体はここまで作り上げることが出来るのか…これはもうリアル刃牙ではないか…と圧倒されるほどだった。撮影も上手くて、想像を絶する筋肉と表面に浮き上がる血管が、私の身体を映画館のシートに縛りつけたかのようだった。

で、その後キャッキャとテンションが上がったのは、タイガー・ジェット・シンが出てきたところと、ブルーザー・ブロディがお茶目な感じで出てきた場面。当時タイガー・ジェット・シンは引退していないはずだが、映画の中では引退したと描かれていて、もしかしたら引退を撤回して日本で活躍していたのかなと思った。ちゃんとサーベル持ってた。

楽しいのはそこまで。そこからは「これ実話なんだよね」という不幸のでかさに圧倒された。こんなこと起きるものなのか……

時代を考えれば、父フリッツの教育が特別厳しかったようには思わなかった。音楽が好きな末っ子マイクのことも否定しなかったし、ケリーは陸上の円盤投げをやっていて、何が何でもプロレスをやれ!ということではなかった。ただ息子たちがプロレスをすると決めると、そこからのフリッツは冷静というか、父と言うよりプロデューサーとして兄弟たちに接しているように見えた。そしてそんな息子たちに対して母親もまたドライだった。

現代だったらあんな不幸なことにはならなかっただろう。時代に恵まれなかったが故の不幸にも感じられた。

あとはネタバレになるのでコメント欄に。
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