Yoshishun

スパイキッズ:アルマゲドンのYoshishunのレビュー・感想・評価

1.5
“ゲームキッズとステューピッドアダルツ(馬鹿な大人達)”

シリーズ全作を手掛けてきたロバート・ロドリゲス監督が、今度はNetflixという場で名作スパイ映画『スパイキッズ』を復活させた!1作目は小さい頃に何度も観た思い出深い作品だけに、この最新作は果たして楽しめるかどうか。3作目以降は最早惰性に感じていただけに、不安を募らせながら鑑賞した。

結果、その不安は的中してしまった。

本作は、過去作のエッセンスは存分に感じさせ、かつEsportsが当たり前の世の中になってきたからこそ、ゲームという視点から新風を吹き込む形となった。姉弟から兄妹と年齢を逆転させ、更には最初からゲームも上手くプログラミングも出来てしまう天才的な性格に変更されている。これも時代の流れを踏襲したように思えるが、それでも劇中のスパイグッズの数々や骸骨の剣士は2を彷彿とさせ、ファンサービス精神もそれなりにある。

しかし、本作は尽く大人勢が馬鹿過ぎる性格に改悪され、更に子どもが天才なせいであれよあれよと困難を乗り越えてしまうため、過去作のジュニのような、臆病で幼い子どもの成長というものがかなり薄い。天才的な性格にしすぎたせいで肝心の子どもの成長についてどう描くか模索した結果、「正直になろう」というメッセージの一点張りで締め括られてしまう。結局ゲーム好きな生意気な天才キッズが馬鹿過ぎる大人たちにマウントを取るだけの内容に成り下がっている。

特に劇中の大人達は、諜報機関であるOSSが無能であったり、本作のキーアイテムであるアルマゲドンコードのセキュリティも酷くガバガバである点でストレスを感じさせる。OSSにはあっさり敵の侵入を許し、かつ保身のためにあっさりアルマゲドンコードを渡してしまうという上官にあるまじき行動が目立つ。それをギャグとして捉えるには、ロドリゲスの性格の悪さが感じられずただ痛々しいだけである。てっきりこの上官もグルかと思ったが、別にそんなこともなかったので余計に腹立たしい。また、今回の両親もやたらヘラヘラしていて、コルテス夫妻のような、たまにカッコ悪いけどやる時はやるというギャップもない。最終決戦で、それも息子がラスボスと闘っている最中に呑気にキスしている時点でかなり興醒めであるし、そもそもこいつらの過去の愚行とアルマゲドンコードの管理の杜撰さが全ての元凶である。終始緊張感のない戦闘も相まって、やる気のない両親の描写には嫌気が差すばかり。せめてコルテス夫妻のような強さを持ったキャラクターが一人でもいてくれたらと思うと残念でならない。

また、本作は子供向け映画に特化し過ぎたせいか、劇中の展開も早送り再生したのかと思える程に雑。特に兄妹がどうやってあの施設に乗り込んだのかもバッサリカットされ、ラスボスにコードを取られ窮地に立たされているのに気持ちの切り替えが著しく早い。せっかく何も知らない子どもたちが命がけのミッションに挑んでいるというのに、全く観てる側に緊張感を与えないのはやる気がないのかと愕然とさせられる。

全編を通してロドリゲスの悪ふざけや気象の悪いクリーチャーが出てこないのも子どもへの配慮にしか思えないので、Netflixという家庭に広く浸透したプラットフォームでの配信だったからこその方向転換とも思える。しかし、ここまでやる気のないスパイキッズを見せられると、さすがに次回作への期待など微塵も無くなるし、ここで打ち切られてしまえという怒りと呆れさえも感じさせる。来年度のラジー賞含めたワースト映画賞にも絡んできそうな程には、シリーズ愛がありそうでない酷い続編だった。
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