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傷物語-こよみヴァンプ-の針のレビュー・感想・評価

傷物語-こよみヴァンプ-(2024年製作の映画)
4.1
西尾維新の「物語」シリーズ第二作の劇場版。第一作の『化物語』の前日譚に当たる物語で、以前三部作として上映したものを一本にまとめて大幅に作り直した映画だそうです、多分。
自分は15年くらい前(!)にテレビで『化』のほうを観たきりで、『傷』には映像でも文章でも触れたことがなかったのですが、これはかなり良かったです! てかこんな好〜い感じのオチがつく話だったのか……。中高生のころの気持ちを久しぶりに思い出させられるような感じがしました。

あとはこんなに羽川翼物語であることも観るまで知らなかったので、けっこうびっくり。
終盤のギャグであると同時にバイオレンスでもあるバトルシーンも楽しかったです。

全体的に昭和の(モノクロ時代の)映画のトーンを模してる感じがあって、往年の社会派ドラマみたいなOPとか黒白黄赤で統一された画面とか海浜の工場群を映す背景とか、そのへんの極端にデフォルメされた絵が形作るトーンがかなり好きでした。
たぶん「物語」シリーズのアニメの背景って作中世界をリアルに描くのではなく、風景を極端にデフォルメすることでその場その場のトーンを醸し出す象徴的な役割を担ってると思うんだけど、それが見事にハマってると思いました(厳密にいうとアニメーションの絵というのは程度の差こそあれ、すべてそういう要素を含んでいるとは思うけど)。

他の方の感想によると、元の三部作からは阿良々木暦のモノローグとギャグシーンを中心に削ってるっぽいです。なのでキャラクター重視で観る方だともしかしたら物足りなく感じるかもしれませんが、自分は正直そうでもないので大変楽しめました。

あと日の丸、富士山、旧国立競技場とかが出てくる理由はちゃんとは分からなかったけど、個々人がそれぞれの立場からあらゆる他者と押しつけ合う「大義」の象徴みたいなもんなのかなーと。
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