8Niagara8

異人たちの8Niagara8のレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.4
素晴らしいリメイク。
主人公のキャラクター造形が映画の価値を根底から変容させる。
アンドリュー・ヘイだからこそ撮れたのだと感じる。
孤独感との一人での向き合い方と愛の具現化。ゲイであることと寂しさは全く無関係で別のベクトルのものである。
しかし、ハリーが言っていたようにアイデンティティに関して寄る辺のなさがあるのは確かのように映る。
年代のギャップをうまく使っている。
アダムは肉欲そのものの後ろめたさというより、病気を恐れるが、それって恋愛におけるいくばくかの感情を排して、結局得ていないと言えるのかもしれないと感じた。
勿論それがよい悪いというものではないが、アダムの寂寞たる不安定さの一因にあるかと。
両親の言葉は残酷さも持ちつつ、肉親同士の感情の暴露が生む安らぎの境地がその先にあった。彼らの存在が確からしいかは別にして家族の存在の絶対的な安心感の所在があったと思う。

大林作品での夏の湿度に代わって、レコードプレーヤーからの音楽が憧憬に似た感情を呼び起こす。前者はじめっとしてたけど、こちらはどこか清々しく、それゆえの物悲しさがある。
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