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リンダはチキンがたべたい!のLCのレビュー・感想・評価

4.9
面白かった!

ひとつの家族から、母と娘、娘の友人、友人の弟や犬、と世界が広がっていく中で、景色も家の中、団地周り、学校と移り変わっていく。そして、社会に様々な人が同時に存在していて、各々が各々の目的のために動いていることがドッタンバッタンと騒がしく物語に笑いを添える。個々人が色分けされているのも面白い。主人公は大好きな黄色で、私だったらどんな色かな。

子どもの世界、親の苦労、姉の苦労、巻き込まれていく人々、それぞれの視点があって、どれも極力美化しないようにしていると感じる。
ニコッと笑う主人公の笑顔が、ゆーて子どもの笑顔は何ものにも勝るよね、と受け取れるのか、天使のような悪魔のそれに見えてしまうのか、見ている者に委ねられていると思う。

大規模なストライキ(作中ではスーパーも精肉店も学校もお休み)の日に思いっきりドッタンバッタンするわけだけど、このストライキのデモに行かなかった人たちに様々な立場を垣間見ることができて面白い。
主人公は「ストライキって、何?」と改めてその存在について関心を寄せる子どもだし、母は片親で低所得者向けの団地に住む人だけど、娘との約束を果たす為に死に物狂いでそれどころじゃないし、一方その姉は自身のヨガ教室をいつも通り開くし、生徒も来る。デモに行かない、つまり今の生活に金銭的な不安を感じていない富裕層なのかもしれない。十分な収入がある人たち。そのような人が、「ストライキをやる人たちのおかげで、私たちの生活にも影響がありますね、困ったことですが、そんな苦難も受け入れましょう」的なことを言う。
基礎知識として、ストライキは「権利を訴える」手段だ。権利を求める人のせいで不自由する、と苦笑しているわけだ。その訴えを、ストライキに至るまで聞かない人がいるわけだが、その人たちには原因がないと思っていたりするのかな。
因みに、その国では労働者の休暇も給与も、彼らはそのように獲得してきた。貴族や経営陣の奴隷じゃない、人として扱え、という主張。ただ黙っているだけでは、そういう権利を与えられることはない、いつまでも少ない稼ぎを貪られて、搾取されるだけだと、歴史からきちんと学んできている人たちでもあるよね。
革命好きなお国柄だな、なんて、一言でわかった気になるのは、少し乱暴かもしれない。特に、いつまでも口を開けた鯉のように上層部からの施しを大人しく待っているお国柄の人は、さ。夏休みや冬休み、社会人になってから、十分に獲得できる環境が十分だと胸を張って言えるかね。それは学生の特権さ、なんて言いながら過労死するのかい。

話を戻そう。
同じようにその日仕事をするスイカトラックの人は、たぶんストライキの権利を持ってない。自営業者とかはそうだったっけ。
自分の裁量でお仕事できるかもしれないけれど、安定した一定のお給料を毎月必ずもらえるわけでもないかもしれない。それでも、現状を改善する為の手段として、ストライキを行う権利を与えられない人。
そしてギターを楽しんでいた若人。親に養ってもらっているので、やはり労働条件や賃金の改善に興味がない。親が勝手に頑張ってくれるから、自分は好きなことに集中できる。そんな日々で暇したりするかもしれないけれど、労働しようと動くことはない姿。労働は自分には無関係だと感じてる。
様々な階層の人が出てくる。でもそんなの詳しく掘り下げないよ、主人公は兎に角チキンが食べてえんだ!

子どもだって大変、大人だって大変、おまわりさんもおばあちゃんも大変。
でも、生活を続けていこう。君といつまでも共にいたいという願いは叶わないけれど、分かち合えることは分かち合って、時には鶏のせいにして、今日も進もう。そんなふうに明るい気持ちで見終えることができるかも。
それとも、ツッコミ疲れるか笑い疲れるか、それもまた楽しいね。

本当に笑えた。私を笑わせることが上手過ぎる作品だった。
全体的にとても軽くて、終始笑いながら見ることができて、80分もないので、鑑賞に際して負担が驚く程少ない。これは何度でも繰り返し見られるぜ、入場者特典にレシピが載っていたけれど、レシピまで笑わせてくるとは思わないだろ。お料理苦手勢だけど一応ちゃんと読んで良かった。最高か。
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