マインド亀

ゴールド・ボーイのマインド亀のレビュー・感想・評価

ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)
3.0
●各所絶賛で公開規模縮小直前の『ゴールドボーイ』観てきました。確かにこれはネタバレしたらダメな映画なので詳細全然書けません。絶賛の声が多いのですが公開規模縮小とのことで、早めに見に行ったほうが良い映画かもしれません。ただ、色々と言いたくなる映画ではありました。

●全く事前情報無しで観に行ったんですけど、なんかすっごい不思議な手触りの作品で。
ちょっと日本っぽくない違和感というか、キャストは間違いのない演技派で固められててスタッフも監督も盤石の体制なんですけど、ディテールが不思議というか、どこか異国感すら汎ってて、エンドロールも英語を併記してて妙な雰囲気を醸してるし、なんせ制作会社が聞いたことないところで。で、見終わったあとにパンフレット買って調べるしかないと思ったら、これまた全然宣伝もされてない作品なのに、邦画ではかなり強気の1300円という高い値段で。デザインもめちゃくちゃ変で。で、仕方ないので買っちゃいましたよパンフレット。
で、パンフレットを読んでなんとなく納得。中国で大ヒットした原作小説とドラマを元に、日本へローカライズされた作品で、さらに中国資本の制作会社が作ってるんですね。
別に中国資本だから変だとか、おかしいとか言ってるんじゃなくて、なんか金子修介監督のタッチも合わさって、どこか懐かしいというか、現代っぽさがないと言うか、それでいて脚本がぶっ飛んでるのでこれは流石に日本ではこうはならんだろ…というような後味でした。私は。だけど制作側も色々苦心してて、そこで舞台を沖縄にすることで、その違和感も有り、のような形にしてるらしいです。原作を知らないので比較はできませんが、できるだけがんばって違和感のないような脚色にしてるらしいので、まだ比較的ツッコミどころは少ないのかもしれません。でもせっかく沖縄が舞台なんだったら、もう少し沖縄の地域性を追求してほしいというか、喋り方は標準語なんですかね沖縄は。

●映画を見慣れた人ほど騙されるようなぶっ飛んだ脚本ですので、これについてはネタバレなので書けません。面白いのは面白いです。ただ、一つ言わせてもらうと、私はそれほど好きじゃないです。騙された!とかびっくりした!とか色々と感嘆の声が上がってますが、途中でとある登場人物に不信感を持ってしまうところからの、なんにもひっくり返さない新しさ、それをすごいというのもちょっと違うかなあ…という気もしました。ネタバレ無しで言うのはすごく難しいですが…まあ続編があるとすれば次はどういうどんでんがえしになるのか、それとも普通のドラマにするのか、っていうところですね。

●金子修介監督のタッチが好きかどうかというのもあると思うのですが、正直『ガメラ』シリーズのような怪獣映画では気にならなかった演技や演出も、現代の大人の映画としてはキツかったです。なんだか全部が臭くて臭くて。サイコパスな人が人を騙そうとしてやってる演技の演技、というのはわかるんですが、そうじゃない人の演技がちょっと古めかしいというかベタというか。
主人公とヒロインのデート場面なんて、いつの時代のメロドラマ?って感じの上に音楽がマーラー交響曲第5番のアダージョでベタの上塗りがされてしまってて苦笑してしまいました。いや、良いんですけどね。で、エンディングが倖田來未っていうなかなかのセンス。いや、良いんですけどね。
岡田将生はやっぱりサイコパスな演技が似合いますよね。『ドライブ・マイ・カー』で演じてたヤバいヤツがそのまま突き抜けたような演技でしたね。やり過ぎな気もしますが。
主演の子どもたちも、すごくイイ!んでよね。特にヒロインの星乃あんなさんは、金子修介監督の嗅覚がしっかりと働いた感じがします。さてさて次にどういうステップを踏んで女優の道を歩んでいくのか楽しみなところではありますが。
一方で黒木華の過剰に一人息子にベタつく母親の演技はこれまた定型的というか、過剰というか…みんな結局セリフで喋り過ぎなんですよね。
演技だけでなく、最後の手紙も、あんなに説明的な書き方しねえだろ!って思わずツッコミました。まあ、そりゃあの手紙で事件の真相がバレるんですから!ちゃんと説明しないとって感じですからね(笑)でもあの文章はおかしい。仕方ないといえば仕方ないですけど。

●確かに脚本がどこに行くのかわからない面白さはありますし、なかなか見たことのない映画であることは間違いないです。そしてこれは観てみて体感しないとわからない映画ですし、面白いことは間違いないです。あとは好き嫌いの問題ですが、是非観てほしい一作です。パンフレット高いですが…強気すぎるぜ…
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