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愛と宿命の泉 PART I /フロレット家のジャンのHKのレビュー・感想・評価

4.8
クロード・べリ監督によるフランスのプロヴァンス地方の小さな村を舞台にした愛憎サスペンス映画。

主演のウゴランを演じるダニエルオートゥイユとジャンを演じるジェラール・ドバルデューは後に「あるいは裏切りという名の犬」でも共演していましたね。そしてセザールを演じるのは「パリは燃えているか」のイヴ・モンタンさん。渋い顔が揃いましたね。

プロヴァンス地方と言えば、雄大な大自然に囲まれてヨーロッパの中でもとても牧歌的な所として有名ですよね。1920年代にフランス革命とか近代化とかが叫ばれた時には都会の喧騒に疲れた人たちがよくここに来てたそうですね。同じような題材で「プロヴァンス物語 マルセルの夏」なんて映画見たことありますが、こっちはプロヴァンス地方の雄大さを描きながら描くハートウォーミングなファミリー映画になっていますね。

それに対してこっちは、そんな牧歌的な温かさを消して、陰湿な村社会を描いていますね。都会から来た新参者に対する村人の冷遇っぷりも描かれます。ペタンクで遊ぶシーンもプロヴァンス物語じゃ心和むのに、この映画ではジャンに対する虐めみたいな構図になっていて、やはり気持ち悪いですね。

セザールおじさんの好々爺に見せかけてのあのクズっぷりには腹立ちましたが、ある種相手を陥れるずる賢さには長けていて凄いと思いましたね。とにかく泉を自分の手に入れるためならなんだってするあの狡猾な姿勢には拍手しました。まあ、元の地主を普通に殺しちゃう大悪人だからね。

ジャンの最後も可哀想だけど、ある種最後までおじさんの手の内で弄ばれてくたばっちゃったから可哀想だけど無能やなとは思った。誰かに頼れば良かったものを、新参者なのだから誰かに媚びれば助かったかもしれないのに。

一番人間味があって、セザールとジャンの間で罪の意識に溺れるウゴランが可哀想であったな。ジャンが死んだ姿を見て泣いてしまうのも、それでもおじさんについて行って悪の道に入っちゃうのもある種の人間味があると思った。でも多分いい子なんだろうけどね。

田舎の農園生活を侮ってはいけない。都会人が大自然の脅威と村人の閉鎖的社会に押し込まれて最後に死んでしまうあの展開。そして最後に灰汁が勝つようなラストは私の鬱屈した心を満たすのに十分であった。

でもさらに素晴らしい愛憎劇を見せてくれるのは次の第二章だ。ここからの復讐劇も面白いから両方ともお勧めですよ。
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