Anne

The Dream Songs(英題)のAnneのネタバレレビュー・内容・結末

The Dream Songs(英題)(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ヒョンチョルの初監督作品なのと、『あしたの少女』ですっかりファンになったキムシウンさんがメインキャストとのことでとても楽しみにしていて期待値も高かった今作、本当に本当に良くて公開して1週間経たないうちに2回観た。この先もきっとまた観たくなると思う。ずっと大切にしたい作品。

相手のことを大切に思っているのに、自分のことでいっぱいいっぱいで慮ってあげられなかったり、傷つけるようなこと言って後悔したり…素直というか不器用というか…自分もこうだったな〜と思春期の頃を思い出しながら観た。
そしてこれは間違いなく女女のロマンスを描いていて、ヒョンチョルが初監督作品でぼやかさずにそれを描いてくれたことが嬉しかった。

映画の中で直接的な表現はないけど、この作品の出発点が2014年に起きたセウォル号事件であることは監督がずっと明言している。修学旅行に出かけた後に起きた事を知っているからこそ、この映画はすごく切なくて苦しい。
実際に起きた事件が元になっていて、実際に被害者がいるという事を踏まえて、もっと物語と距離を置いて見るべきだったと今になって反省している。。あと単純に知識不足だった。
唯一バスの中のシーンで「現場調査」とか「捜索が難しい」とニュースの音声が入ってセウォル号事件を思い起こさせる説明的な部分があったんだけど、そこについてはヒョンチョルがラジオで、映画の構想を始めた2016年(事故から2年後)の時点では、“修学旅行前日の二人の物語”というとセウォル号を自然と思い浮かべたけど、時間が経つにつれて人々の記憶から忘れ去られていることを実感したから、意識的にそのシーンを入れたんだと言っていた。
忘れてはいけないね。記憶します。

セミが草原で死んでるハウンを見て「それが自分だったかもしれないと思った」という台詞を聞いたとき、この物語はセウォル号事件にとどまらずに、もっと広範な、現代社会における死にも通じているのかもしれないと思った。「あの時犠牲になったのは自分だったかもしれない」という視線は、セウォル号事件はもちろん、江南駅殺人事件が起こった時に多くの人が抱いた「彼女は私だったかもしれない」という感情や、それこそ『あしたの少女』でキムシウンさんが演じた、構造的に女性が搾取される社会におけるソヒの死とも繋がっていると思う。

緑にたくさんの光が差している映像はみずみずしくてきれいだし、温かくて優しい気持ちになるストーリーなんだけど、2回目観終わってからはこの映画で描かれた「死」について考えるようになったからか、ずっとぼんやり悲しい。
Anne

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