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映画の殿堂:エジプシャン・シアターの100年史のdm10foreverのレビュー・感想・評価

3.7
【継承】

僕の娘が初めて劇場で映画を観たのは彼女が4歳になったばかりの2013年7月25日。
ユナイテッドシネマ札幌で「モンスターズ・ユニバーシティ」だった。

同じく息子が初めて劇場で映画を観たのは彼が5歳になってちょっとした頃の2018年8月26日。
スガイディノスシネマ札幌(現サツゲキ)で「劇場版ドライブヘッド」だった。

二人とも、初めての映画館にちょっと緊張していて、場内が暗転するなり僕の手を握ってきたりして(笑)
(別々で行ってても似たような行動をするって、やっぱり姉弟なんだね~)
でも、映画が始まると目の前の大スクリーンの中で大好きなキャラクターたちが所狭しと動き回る姿にすっかり魅了されたようで、途中から「怖いの『この字』」も言わなくなりました。

そして映画が終わって真っ先に「おトイレ、大丈夫かい?」って、いかにもお父さんっぽい僕の心配を他所に、目をキラッキラさせながら「面白かった~~!」っていう第一声。

おうちのTV画面で観るのとは違って、真っ暗な部屋の中で「大きな画面」と「大きな音」に包まれながら大好きなキャラクターの事だけを考えながら観られる幸福感。
それは何も大人だけのものではない。
純粋に「何かに触れ、心が動かされる」っていう体験は、むしろ子供の頃に積極的に経験すべきだと思う。

オペラにはオペラハウス(歌劇場)がある。
絵画や彫刻には美術館がある。
野球やサッカーにはスタジアムがある。
そして、映画にはスクリーンがある。

それは映画を楽しむだけではなく「映画を観に行く喜び」や「観終わった後の幸福感」も同時に連れてくる。
そこに行かなければ決して味わう事のない高揚感。
映画が始まるまでのワクワク、ドキドキ。
ポップコーンの香ばしい香りに誘われながら、グッズコーナーの一つ一つがキラキラして見える。
そして、真っ暗な劇場で完全没入することで得られる純粋な興奮と感動。

僕はいつも「どんな映画でもいいところはあるさ」っていう意識で映画を観ています。
それは作り手に対するリスペクトも勿論そうですが、それ以上に「あの暗闇の幸福感」の中で体験する作品の一つ一つに愛着のような不思議な感情が湧いてくるからなのかもしれません。

映画好きだった少年は、やがて「映画監督」になるかもしれない。
映画好きだった少女は、いつしか「銀幕女優」として一世を風靡するかもしれない。

でも、それが全てでもない。

いつまでも「あの空間」と「あの時間」が欲しくて、何度でもそこに通ってしまう。
そんな映画ファンだって、やっぱり映画の世界の住人だ。

作り手がいて、観る人がいて。
そんな人たちの想いを繋ぐ場所。
それが映画館なのかもしれない。

別に凝った内装なんてなくてもいいかもしれない。
何年も貼りっぱなしの「ベティ・ブルー」のポスターがトレードマークの小さな映画館だって、僕は素敵だと思う。

そこに人が集い、映画を観て、泣いて、笑って。

シネコンにはシネコンの良さがある。
でも、やっぱり「特別な場所」っていうロケーションは昔の映画館には勝てないのかもしれない。


そして・・・僕自身の初回となるとさすがに日時までは覚えていないけど、親父に連れられて行った札幌東宝公楽で観た「ドラえもん」が初めてだったことははっきりと覚えている。
そして帰りに親父と手を繋いで帰ったことも。
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