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ゴースト・トロピックのyadokariのネタバレレビュー・内容・結末

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

一本目は『Here』を爆睡していたので、こっちはしっかり見た。ベルギーの移民オバサンの話で『Here』よりはわかりやすいかったような。2つとも出会いがテーマなんだが、『Here』の方はちょっと分かりづらかったのは苔というテーマ性みたいなものだろうか。こっちはイスラム系移民のオバサンが終電に乗り越してしまい、知らない夜の街を彷徨うという映画なのだが、最初に観光ツアーのポスターを眺めているのだ。そして、このオバサンの夜のミステリー・ツアー(一人旅だが)と言えなくもない。

日常性から非日常世界へ劇的に変化する郊外の深夜の様子は、夜勤している人や夜の街を彷徨うホームレスや若者しか知らない表情を見せる。彼女も移民労働者の掃除婦で日常でも朝早くから夜遅くまで勤務をするのだが、最初にその主人がいない部屋を映し出す。もぬけの殻の部屋。そうして深夜も彷徨ってしまうオバサンはまさに幽霊のように街を彷徨うのだが。

一つは普段こういう移民は幽霊のように生活しているということがあるかもしれない。また深夜の街にはそうした幽霊のごとく人が漂っているのだった。その中でオバサンがそうした幽霊たちに出会う映画とも言えるかもしれない。

この映画が素晴らしいのはラストに観光地に切り替わるシーンが、そこにいたのはまさにオバサンの青春時代と感じさせるところだった。そこがノスタルジックでもあり、ファンタジーさがある。移民問題をこういう形で捉えた問題作かもしれない。
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