耶馬英彦

巡る、カカオ~神のフルーツに魅せられた日本人~の耶馬英彦のレビュー・感想・評価

4.0
 チョコレートは、ウイスキーによく合う。たくさんはいらない。少しでいいから、香りがよくて、口当たりが円やか(まろやか)なものがいい。ウィスキーの匂いと相俟って、芳醇な香りが気分を豊かにしてくれる。バーで高級チョコレートを齧りながらスコッチを飲めば、ひとりでも楽しい時間が過ごせる。

 本作品の主な舞台はガーナとコロンビアのカカオ農場だ。カカオを仕入れてチョコレートを作ろうとする、ふたりのエネルギッシュな女性が登場する。カカオとの関わり方はそれぞれだが、共通している目的は、カカオ農家の生活の向上と、カカオ文化の発展である。
 ふたりが頑張っていられるのは、それだけカカオに魅力があるということなのだろう。本作品では、カカオの歴史とカカオの魅力、カカオ農家の現状と今後についての展望が語られる。米や野菜などの他の農作物と同様に、カカオも人類が大切にすべき作物であることが分かる。

 そしてコロンビアのアルアコ族。アルアコの生活の向上とカカオ文化が保たれることを願っていると話す。温厚で善意に満ちて、自然を崇拝し、カカオと世界を愛している人々だ。こういう精神性が世界の片隅にひっそりと存在しているところに、人類の希望を感じた。
 変化はいつも周辺から起こる。金融資本主義の拝金主義者たちとは対極にある彼らのような人々こそが、次の世界を担うことになるのかもしれない。とても勉強になった。

 シネスイッチ銀座では、本作品のポスターデザインのMEIJIのチョコレートを貰った。鑑賞者全員に配っているのだろう。今夜もウイスキーが美味しく飲めそうだ。
耶馬英彦

耶馬英彦