ワンコ

沖縄狂想曲のワンコのレビュー・感想・評価

沖縄狂想曲(2024年製作の映画)
3.8
【落とし所の見えない議論】

リアリズムも陳腐化する。

昔、リアリズムと称する「ソ連脅威論」があった。
当時の識者からは、ソ連のような経済的に疲弊した国が脅威であろうはずがないと言っていたことも思い出す。
実際、その通りだった。

この映画でも触れられる中曽根の不沈空母発言には、こうしたソ連脅威論が背景にあった。

これに対し、中国脅威論は、中国の経済的発展や、一帯一路をはじめとする飽くなき対外拡大路線、軍事的・脅迫的発言・行動をベースにしているように思える。いわゆる、リアリズムをベースにしてると云うやつだ。
しかし、これも科学技術の進化や深化、発展、それに伴う経済発展や軍事技術の進化、更に軍事戦略・戦術の変化で大いに陳腐化する可能性はあるのだ。

だから、安易に”アメリカは日本を守る気などない”などという議論に乗るのもどうかと思う。

ただ、アメリカはずっと昔からアメリカファーストだ。

日本の製品がアメリカや世界を席巻しそうになった時には、あれこれ難癖をつけたり、ジャパンバッシングはあったし、日本製品の大規模な不買運動もあった。

コロナよりももっと前に、朝日新聞が元米軍高官にインタビューをした記事を読んだ。

日本の防衛力を強化するためには具体的にはどんな方法が考えられるかとの質問に対し、彼は、トマホークを装備することだと答えていた。

安保法案など話題になりがちだったが、アメリカは具体的に日本の自衛隊にトマホークを買わせる気だとその時に思った。

そして、敵基地攻撃能力の議論は、きっと、そのお膳立てに違いないと思っていた。

今年、日本は400発のトマホークを買うと発表した。
その通りになったのだ。

トマホークは、1970年代から装備が始まった長距離射程の精密誘導兵器だが、その開発は謎に包まれた部分が多く、この登場によって核を含む軍事戦略が大きく変わったと言われている。

そして、ミサイル防衛も格段に進化した。
ついこの前までは、中国は台湾に対して、揚陸艦を使って大量の兵士を送り込む戦略を考えていたが、多くの揚陸艦を着けられる場所が台湾の海岸線は極端に少なく、揚陸艦のような軽装備の船はミサイルで攻撃され撃沈の可能性が非常に高いために、中国は戦術の再考をせざるを得なくなり、揚陸艦の建造をやめてしまった。

では、ミサイルを大量に撃ち込むのかといったら、ウクライナやイスラエルで明らかになったように、パトリオットやアイアンドームの迎撃能力は、巷で疑問視されていたよりも格段に高性能で、軍事戦略を更に再考させるに足るものになっている。
そして、レールガンやレーザー迎撃が日英でも進歩し、大量のミサイル兵器が単なるコストでしか無くなる可能性もないとは言えないのだ。

“ヤマトンチューは傍観者で当事者ではない”という指摘には反論の余地もない。

ただ、沖縄から基地を少なくすることは喫緊の課題であることは理解したい。

しかし、リアリズムと称するセンチメンタリズムと、理想主義然としたセンチメンタリズムのバトルにしてはならないと思う。

沖縄を東アジアの経済のハブにという理想も分かる。

ただ、経済も変化するし、企業の思惑も交錯する。

しかし、詳しくは話せないが、日本のベンチャー企業には、東南アジアに進出して、発展途上国の社会的な課題の解決に大きく貢献しつつあるところもある。それも、ハイテクではないところでだ。

東南アジアの国々が日本に求めるのは、そういう部分も多いのだ。

こうした映画を観てていつも思うのは、理解したい気持ちは大きいものの、具体的なところまで落とし込むのが難しくて、リアリズムと称するセンチメンタリズムと、理想主義然としたセンチメンタリズムのバトルになりがちじゃないかと云う疑問だったりする。

麻生セメントや岸信介の関係企業が、辺野古埋立で大儲けしているとしたら、それを暴かないのはメディアの怠慢だ。
震災による津波の恐怖を煽って、必要以上の防波堤を延々と作ろうとするマリコンと同じかもしれない。

もっと整理して、時代によって変化することも前提にした戦略を柔軟で且つ緻密に練らないと、本当に日本も沖縄も立ち遅れてしまうような気がする。
ワンコ

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