まるもっと

またヴィンセントは襲われるのまるもっとのレビュー・感想・評価

3.8
目が合った人間が狂人となり、
主人公に殺意を向けてくる不条理劇。
ある種の「ゾンビ映画」。

主人公は何故襲われるのか?を読み解けないと
なかなか飲み下し難い作品。


紐解くポイントは、
「インターネット」と「人間の価値観」。

目が合うことで、狂人化していくというのは、
コロナ禍を経験した我々が、
「飛沫=感染=狂人化」に擬えているのと同時に、
ネット情報に感情が動かされ、穏やかな人間さえも
忽ち「凶暴化」してしまうという、
ゾンビ映画のような表現。

主人公のヴァンサンは情報技術社会に
どっぷりと浸かっており、
まだ社会人ではない学生、田舎の知人子供、
貧困の女性店員等が次々に影響を受け、狂人化していく。
それはネットの情報を真に受け、
一時的に陰謀論に傾倒していく様でもある。

そのような価値観を持たない、
人間に癒やしをくれる「犬」が、
感染、陰謀論に取り込まれた人間を、
馬鹿発見器として使われているおかしさや、

SNS等で承認欲求から自らの写真を晒すこと、
またそれを、他者が簡単に覗ける場面などは、
SNSの暗部として描かれる。

場面描写はないものの、
冒頭からあるヴァンサンの顔の傷は、
交際相手とその様ないざこざがあったと推測される。

後に登場する元大学教授は、
ヴァンサンのもう一つの未来として登場。

孤独に生かざるを得なくなり、
時間経過により「病気」は沈静化するものの、
家族の信用は失い、最後は自死を選択する。

ネットという現代と切り離せないツールは、
使用方法、受け入れ方を間違えれば
人は喜怒哀楽を制御出来なるし、
誤情報(ウイルス)となり蔓延もする。

現代の心の病気を癒やすのは、
それから物理的に離れ、
ディスプレイの前にあるものではなく、

実際に人間の「目」で見て感じる自然だったり、
人間同士の温もりという他者への寄り添いではないかと
感じることの出来る映画だった。
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