半兵衛

鷲と鷹の半兵衛のレビュー・感想・評価

鷲と鷹(1957年製作の映画)
3.3
井上梅次監督による娯楽のポイントを押さえた演出が楽しい海洋アクション映画。

冒頭起こる殺人事件、出発する船に乗り込む二人の謎多き男、何かを企んでいる船長とミステリー的展開がサクサクとテンポよく進行していくので、どうなっていくのか興味を持って最後まで見ていられる。それらの伏線が全てが結び付くクライマックスの大嵐の迫力も見事、当初はあまり仲の良くなかった主人公の石原裕次郎と三國連太郎が協力しあってこの船の転覆危機を救うのがグッとくる。

『狂った果実』の何を考えているかわからない無軌道な青年の延長線上のような、常にへらへらして内の感情を見せないアウトローな船員の石原裕次郎も良いのだが、それ以上に石原と一緒に船に乗り込む三國連太郎の方が個人的にインパクトがあった。後年のおじいちゃんや中年的役柄とはイメージの違った、マッチョで引き締まった体と美形な顔立ちのフェロモン全開な男前なキャラクター。その横顔には息子である佐藤浩市(『GONIN』の頃)の面影が覗く。

コメディリリーフ的な船員を後年の悪役イメージが強い西村晃や安部徹が嬉々と演じているのが新鮮で、殊更安部徹はあまりの野蛮だけど良い人ぶりに「後半になって味方の船員を裏切るはず」と疑いながら観賞していた(結局裏切らなかった)。あとある事情で無理やり船に乗り込んだ二人のヒロイン、浅丘ルリ子と月丘夢路の美しさも映画に花を添える。そんな彼女たちが荒れてる海でもメイクを完璧にしているのはさすがに苦笑いするが、その二人を容赦なく甲板に立たせ波を浴びせてびしょ濡れにさせる監督の鬼っぷりが最高。そしてほんのちょい役の船員なのに顔立ちで目立つ榎木兵衛のインパクト。

それとまだデビューして間もないのに歌声が完成している石原裕次郎のモンスターっぷりに感嘆する。
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