ツキツキ

めまいのツキツキのレビュー・感想・評価

めまい(1958年製作の映画)
4.0
 ヒッチコックなのにバッドエンドを採用している。一体どういう心境の変化だろう。別に僕はバッドエンドが嫌いなわけではない。ありきたりな甘ったるいハッピーエンドよりかは幾分かマシだ。でも、これはヒッチコック映画だ。ヒッチコックは観客にドキドキとハラハラを与える代わりに最後には必ずハッピーエンドにすることで全体のバランスを保ち、ちゃんと自分の映画が大衆映画になるように調整してるものだ思っていた。しかし、今作は違った。なぜ?
 それはさておき、映画の魔術師ヒッチコックの最高傑作に挙げられることの多い今作「めまい」は噂通り、彼の映像センスが遺憾なく発揮されていた。彼は大量の鳥も、大掛かりなアクションも自分には必要なく、ただその映像の力だけで観客を魅了することができると今作で改めて示した。彼の映画には常に同じ魔法がかかっている。そして、今作は魔法の質も巧妙さも最高だった。「そりゃこれが最高傑作になるわな」と感じさせられた。純粋な映像の力で感銘を受けた。
 さて、結局ヒッチコックは何故バッドエンドを採用したか。僕は一つの理由に美男、美女にたまには酷い目にあって欲しいという、彼の潜在欲求の現れではないかと思っている。本当のところはわからない。でも、もしかしたら、この彼のルール外の行動が、映画の魔術師ヒッチコックの核に近づく手がかりになるのではないかと感じた。
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