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ソイレント・グリーン デジタル・リマスター版のプレコップのレビュー・感想・評価

4.0
キートンからの教訓〜人ゴミって面白い

カメラに映る人が多すぎる映画ほどワクワクするものはない。現実社会では満員電車やドミノ転倒を想起させ、特にコロナ禍以降は衛生的に不快感を催させるが、映画となると話は別。途端にコメディやパニックを引き起こす要素となる。しかし、CG全盛の現代はあまりワクワクする人ゴミものは多くなく、「ゴジラ-1.0」や「ジュラシックワールド」などのパニック描写にはイマイチ心惹かれなかった。人が多すぎて面白いネタの最高峰は「キートンのセブンチャンス」だと思っている中で、本作「ソイレント・グリーン」は少し捻った見せ方を生み出した。

闇市のような空間に人々が集まる。そこで暴動が起こると収集車がやってきて生きたまま捨てていく。別のシーンでは主人公の刑事がアパートの階段に集まって寝静まる人々の間を縫うようにして昇降しており、ここでは笑いも起きていた。どちらももはや人を人のように扱わないことで、それがインモラルなものとして笑いを生んでいる。

しかし、現実社会は半世紀前予想された2022年に接近している。もはや新興国はこの状態だし、先進国でも都市過密がさらに進めばもうそこまできている。もちろん日本も例外でなく、東南アジアのようになってきている新宿や渋谷の有り様を見ると笑うに笑えない。

度を越した演出は良い点も悪い点もあるが、家の中に本や家具として置かれる人間や牛肉一つで死ぬほどよろこぶ彼らを見るとディストピア感がありありと伝わってくる。ところどころ「AKIRA」に繋がるような場面や「告白」後の荒唐無稽で雑なラストもあり、楽しい時間だった。
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