明石です

男性・女性の明石ですのレビュー・感想・評価

男性・女性(1966年製作の映画)
4.8
シャンソン歌手として売れ有名になっていく恋人と、うだつの上がらない自分にフラストレーションを溜める青年の話。121本のうち3~4本しか完成していない映画という触れ込みで上映される、ゴダールらしい断片の集積。オムニバスっぽい形式ながら1本筋の通ったストーリーのある、私的にはかなり好きな1作でした。

主演は『大人は判ってくれない』の元子役ジャン・ピエール・レオ、ヒロインは童顔に憂いのある面差しが印象的な、本作が映画デビュー作のシャンソン歌手。そしてゴダール本人は開巻5分で銃殺される男の役でカメオ出演し、またブリジット・バルドーによく似た女性の役でブリジット・バルドーが出演と愉しい配役でした。

ベトナム戦争の風刺や人種問題への問いかけ、強制収容所への言及や、ブルジョワ批判そして社会主義の傾倒などなど、政治的な色がちらほら垣間見える。しかしまだ断片的に差し込まれるだけで主要テーマにはないっていない様子。そして「思想では何でもできるが、感情では何もできない」などゴダールらしい警句にも、のちの左翼傾倒への兆しが見られる、気がする。

「1年半、軍隊にいたんだ」「楽しかった?」「まさか。権威に対してわずかな自由を獲得することがいかに困難か思い知らされたよ」何気ない会話(というか女性を口説く場面)で咄嗟にこんなこと言う人いたら絶対友達になりたい。そして「ねえ、世界の中心は何だと思う?」と女の子。素敵なのはお互い様でしたか。

——好きな台詞
「1人殺せば殺人鬼。無数に殺せば英雄。皆殺しなら天使だ」

「認識とは世界に心を開くこと」
明石です

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