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サンセット大通りのcyphのレビュー・感想・評価

サンセット大通り(1950年製作の映画)
3.8
ラストの階段を下りていくショットの凄みったら こんなことが実際たくさんあったんだろうな〜と感心して見終えた後キャストについて知ったら現実に寄せまくりでびっくりした 奇跡の作品じゃん 無声時代の大スターたち(主人公いわく蝋人形たち)に再び息を吹き込み甦らせカメラに焼き付け葬り直す、なんて大仰な企画を監督6年目でよくやるな、とビリーワイルダーの若い才気にもなんだか感動してしまう

シュトロハイム演じる謎の執事マックスが初めて会ったとき彼女はまだ16歳だった、わたしは彼女のデビュー作の監督で、彼女の最初の夫だ、と告白したときがいちばんハリウッドの闇…となり不気味でよかった 少女としてこの世に産声を上げたときからある意味大人たちの食い物としてスポットライトとカメラのない場所での生を奪われてきたのだから、それ以外(現実)に目を向けろという言葉は死刑宣告に等しい 彼女の不安定さが不意に歴史を纏い現実味を帯びるいいシーン

16番スタジオでの一幕、ライトの中心で《往年の大女優》として羨望と親愛の眼差しを注がれるノーマ・デズモンド、からのライトがステージに戻った途端に蜘蛛の子を散らしたように人々は去りぽつんと椅子に座った華奢な身体が一人残される様がなんとも哀しくよかった 少なくとも現代の映画人たちが特に悪者ではない、かつての憧れのスターに引導を渡すなんて損な役回りを請け負いたくないだけの善人たちなのも切ない
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