Fitzcarraldo

ボウリング・フォー・コロンバインのFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

4.3
銀行口座を新規開設するだけでお好きな銃が貰えるという謎のキャンペーンを新聞広告で見つけて、自ら銀行へ赴きクソでかいライフル銃をゲットするところから始まる。

そのライフル銃を手に持ちながら床屋で散髪をする。なにこの光景は?そしてなんてことないありきたりの床屋で銃弾まで買えるという…。

そんな銃愛好家の街ミシガンで育った僕…とおどけながら当たり前の光景を先ず見せるファットでファニーなマイケル・ムーア監督作。


ミシガン州
民兵訓練所に通うオッチャン
「市民軍は伝統だし武装は国民の責任だ。非武装では無責任だよ。誰が自分の子供を守る?警察か?政府か?違う!自分の身は自分で守らねば。それをしないのは怠慢だ。米国民としてね」

こういう意識のひとが圧倒的に多いのだろう。なんだろう…物事をひとつのことに決めつけて多角的に見ることをしない…これを変えることは難しいだろう。


オクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件の犯人として逮捕されるも証拠不十分で不起訴となったテリー・ニコルズ。
その兄ジェームズ
「もし国民が、いかに政府や権力者によって搾取され奴隷化されてると気づいたら…国民は怒りで反乱を起こすと思う。激しい怒りで流血沙汰になる。政府が専制的になったら、倒すのが国民の使命だ」

マイケル・ムーア
「ガンジーの方法はどうだ?非武装で英国に勝った」

ジェームズ
「それはよく知らない」

おい!学べよ!
「知らない」の一言でよく済ませられるな。こういう狭窄視野の頑固者が多すぎる。




「"Happiness Is a Warm Gun"はリバプール(イギリス)のロックバンド、ザ・ビートルズが1968年に発表した楽曲です。ジョン・レノンの3つの曲を繋ぎ合わせた作品です。
タイトルはジョージ・マーティンがスタジオに置き忘れた銃雑誌の表紙に載ってた見出しから拝借しました。暖かい銃ということは何かを撃ったばかりの銃なので、銃を撃って幸福を感じる人たちを揶揄してます。
そこに性的な意味合いを込め、複雑な構成にし、ビートルズマジックを炸裂させてます」

"Happiness Is a Warm Gun"が流れているところで、突如として実際に銃で撃たれる瞬間の映像が差し込まれる。
女性が2人で歩いてるところをいきなり背後から何発も撃ってる男。この映像が怖すぎる…これはなんの事件?撃たれた女性に歩きながらインタビューしてる?あの女性は誰?一瞬の出来事…この映像を見せられながら"Happiness Is a Warm Gun"がバックで流れると…なんだかこの曲にも腹が立ってくる。

激烈なブラックユーモアとしてうまい構成だなと感じる。



LOCKHEED MARTIN
ロッキード社
世界最大の武器メーカー
PR担当
マコラム
「いまいる工場と、あと2つの大きな工場はリトルトンにあります。ですから5,000人を超す従業員の多くがリトルトンに住み、子供たちはコロンバイン高校へ。あそこで起きた事件は世界中で起きてることの縮図だと思います」

確かに…原発も、沖縄の米軍基地問題も、これと遠くない話。新たな雇用を生み出し、その仕事のお陰で生活している家族がいるという現実。ここをなんとかせねば、根本治療とはならない。


マコラム
「彼らの動機ですか?おそらく様々な問題への怒りが根っこのひとつでしょう。怒りを抑制する訓練の講座があるので、当社ではジェファーソン郡の学校に10万ドルを寄付しました。その講座によって先生と生徒の双方が怒りと付き合う方法を学べればと」

マイケル・ムーア
「子供たちはこう考えたのでは?"親父は毎日、工場で大量殺戮兵器のミサイルを作ってる。なら同じだ。コロンバイン高校での大量殺人も"」

マコラム
「その2つに特別な関係があるとは思いません。お話のミサイルは、侵略者から国民を守るためのものです。社会や国や政府は不快なことをするものです。しかし我々は対応せねば。そうした不快さや怒りに適切な方法でね。誰かに怒りを覚えたからと…ミサイルを発射してはなりません」

ここで ルイ・アームストロングの『この素晴らしき世界』が流れる。この発言の後に、この選曲。タイトルがクソ皮肉になっていて編集のセンスが素晴らしい。

そして…
この素晴らしき世界にのせて、米国のやってきたことを矢継ぎ早に紹介する。

1953年
米国はイランのモサデク政権を転覆
パーレピ皇帝の独裁政権を樹立

1954年
グアテマラの民主的政権を転覆
20万人が殺害

1963年
南ベトナムのディエム大統領暗殺を支援

1963〜1975年
米軍は東南アジアで400万人を殺害

1973年9月11日
チリでクーデターを支援
民主派のアレンデ大統領を暗殺
ピノチェト独裁政権を樹立
5,000人のチリ人が殺害

1977年
エルサルバドルの軍指導者を支援
70,000人の民間人と4人の米国人尼僧が殺害

1980年代
対ソ政策でビン・ラディンらテロリストを訓練
CIAは彼らに30億ドルを供与

1981年
レーガン政権は"コントラ"を援助
30,000人のニカラグア人殺害

1982年
対イラン政策でフセインに数10億ドルを供与

1983年
対イラク政策でイランに武器を秘密供与

1989年
CIA兼パナマ大統領のノリエガは米政府に反発
米政府はパナマに侵攻
ノリエガを逮捕
3,000人のパナマ民間人が犠牲に

1990年
米国からの武器でイラクがクウェート侵攻

1991年
米国はイラクを攻撃
ブッシュはクウェートの独裁者を復権

1998年
スーダンの"兵器工場"を爆撃
そこはアスピリン工場だった

1991年から現在も毎週イラクを爆撃

国連の推計では爆撃と制裁で50万人の子供が死亡

2000〜2001年
タリバン政権下のアフガンに2億4,500万ドルを"援助"

2001年9月11日
ビン・ラディンはゲリラを使い3,000人を殺害


こんなにアメリカやらかしてるのか…80年生まれの私からしたら子どもだったとはいえ、ほぼリアルタイムにも生きていたのに知らないことが多い。

歴史好きや戦争に関しては親父がうるさかった気がするが、子どもとコミュニケーションを取るような父ではなかった所為で、その手のことを学べなかった。

母は何も知らないし興味なさそう…というか、子育てと家事と仕事で、そんなアメリカのことをとやかく学ぶ時間なんて皆無だったのであろう…

学校の先生が優秀であれば、学校で時事問題も歴史と絡めて教えてもらえたと思うのだが…小5小6の時は大卒あがりの社会人一年目の童貞先生が担任で…そんな教養もあるわけもなく…

話がそれた…

改めて学び直しが必要な80年〜90年代の時事問題。


ナレーション
「南デンバーとリトルトンの空軍士官学校にはB-52爆撃機が展示してある。説明文は誇らしげだ。"1972年のクリスマスイブ この機はベトナム人を殺害"と…ベトナム戦争中、最大の爆撃作戦だった。町の外はロッキー・フラッツ。世界最大の核兵器工場があり、いまは放射性物質の廃棄場だ。地下では航空宇宙防衛司令部(NORAD)が核ミサイルを監視。ミサイルはコロラドに点在している。月に一度、ロッキード社はロケットを輸送。弾頭を搭載し、町の中を抜け、コロンバイン高校の近くを通り、デンバーの反対側の空軍基地まで行く。輸送は深夜に行われる。子どもたちが寝ている間に」


1999年4月20日
コソボで米国が一日に行った最大の爆撃

会見
クリントン大統領
「標的はセルビアの弾圧機関であり、民間人の犠牲は最小限に留めている」

って言うよねー
ずっと同じこと繰り返してるし、
アメリカもロシアもさして変わらない。

その1時間後…また会見

クリントン
「コロラド州リトルトンで恐ろしい乱射事件が…国民の皆さん、生徒や先生のために祈りましょう」

なんだろうね…この感じ…なんの説得力もないというか…はいそうですね共に祈りましょう…ってなるか?お前の指示で他国にはその何百倍ものことやってるだろうが!なんだかなぁ…


ここでようやくコロンバイン高校銃乱射事件の映像が流れる。
学校に設置された監視カメラの映像に、911に通報した声。そして事件当時、取材を受けた泣きじゃくる生徒。

これだけだと何が起きたのかよくわからないので、Denis Villeneuve監督作の"Polytechnique"(2009)邦題『静かなる叫び』を見て脳内補完するといい。モノクロの映像にやたらと発砲の音がデカくて生々しい。そして犯人の狂気。二本立てで見るとよりシンクロ率が高まる気がする。


乱射事件の10日後…

全米ライフル協会(NRA)会長
チャールトン・ヘストン
「銃は死んでも渡さない」

ナレーション
「喪中の町の嘆願に反してヘストンはデンバーで銃の擁護を唱えるNRAの大規模な大会を開いた」


銃規制に訴えデモをする人たち
パネルには…
KIDS+GUNS
=A DEADLY EQUATION

こども+銃
=死の方程式



犯人がマンソンを聴いていたということでマンソンが吊し上げられる。

マンソン
「ガキの頃、音楽は逃げ道だった。音楽だけは決めつけをしない。服装が悪いとか言ってレコードは怒鳴らない。逆に肯定してくれる…
なぜ、オレが攻撃されるのか分かるよ。オレを犯人にすれば簡単だからだ。つまり、オレは恐怖のシンボルってことさ。皆が恐れるものの象徴なんだ。言いたいことも言うしな…
あの悲惨な事件には副産物が2つある。娯楽における暴力と銃規制の問題だ。この2つは秋の大統領選挙の争点とうまく重なる。しかも人は忘れている。大統領のスキャンダルや、他所の国を爆撃してることを…そりゃオレは悪者さ。ロックを歌ってるからな。でも影響力はどっちが強い?大統領とマリリン・マンソンと。オレは大統領の比じゃない」

マイケル・ムーア
「あの事件と同じ日、米軍がコソボで最大の爆撃を行ったのは?」

マリリン・マンソン
「ああ知ってる。まったく皮肉だよ。大統領の所為で事件が起きたとは誰も言わない。メディアの望む恐怖の生産法と違うからだ。人は毎日テレビのニュースを見て、恐怖を詰め込まれる。エイズに洪水に殺人事件。パッとCMに切り替わって…"コルゲートを買え!息が臭いと嫌われる" "ニキビ面だと女の子とヤレない" まるで恐怖と消費の一大キャンペーンだ。米国経済の基盤はそれだと思う。恐怖を抱かせてモノを買わせる。突き詰めればそういうことさ」

マイケル・ムーア
「コロンバインの生徒や、あの町の人々に話すとしたら何と言う?」

マリリン・マンソン
「何もだ。黙って彼らの話を聞く。それが大事だ」

マンソンこんないいこと言えるのか?!
完全に見た目で誤解してた…よく知りもしないで偏見をもつことは怖い。よくよく気をつけなくてはいけない。

「まるで恐怖と消費の一大キャンペーンだ。米国経済の基盤はそれだと思う。恐怖を抱かせてモノを買わせる。突き詰めればそういうことさ」

敗戦国となり米国に支配されただけあって、日本経済も全く同じ基盤だと思う。やり口が同じ。先ずはテレビを見ることをやめるところからスタートしないと延々と続くだろう…


保安官代理
「時間の朝、2人の容疑者はボウリングをしていたそうだ」

ナレーション
「彼らは学校を襲いに行く前に2ゲームやってた?では、なぜボウリングが悪影響を与えたと非難されない?マンソンを責めるのに、なぜボウリングは?それこそ事件の直前にしていたことなのに。だが待てよ。ボウリングは外国でも盛んだ。不吉なゴシックロックの故郷ドイツでマンソンは不人気?フランスに暴力映画はないか?暴力的ゲームの多くは日本製だ。家族崩壊が若者を暴力に走らせると信じてる米国人は多い。だが統計では家族崩壊や離婚率は英国の方が高い。自由主義者は貧困こそ暴力の原因だと主張する。だがカナダの失業率は米国の2倍だ。むろん、暴力は米国の歴史とする意見が有力だ。過去を見よ…と。カウボーイとインディアン、西部開拓時代。征服と流血の歴史。だが、それが米国における暴力社会の原因なら、これはどうだ?」

字幕
ドイツ 1200万人を抹殺

日本 中国を占領

フランス アルジェリアで大虐殺

英国 インドで大量殺戮

にも関わらず、銃による年間の犠牲者は?

ドイツ 381人
フランス 255人
カナダ 165人
英国 68人
オーストラリア 65人
日本 39人
アメリカ合衆国 11,127人


コロンバインの犠牲者の父
マウザー
「他の国との比較論になると"文化が違う"と毎回同じ意見を聞く。だが他の国にも、ゲームや映画はあるし、疎外された若者もいる。それに学校でお祈りの時間もない。では米国だけ何がそんなに違う?…わからない」



アニメ米国史
これがまた秀逸
めちゃくちゃ早口でテンポ良く進む
倍速視聴の若者たちには、このアニメで米国史を学んでほしい

「昔々、欧州の清教徒たちは迫害に怯えていた。それで迫害のない新天地へと航海に出た。
だが野蛮人を見てまた怯えるハメになり、皆殺しに。でも一民族を抹殺しても安心できず、今度は互いを恐れ始めた。魔女狩りをした。
1775年 英国から独立すべく英国人を殺して、大成功!それでも不安で、銃所持を認めるよう憲法を修正。それは天才的な案"奴隷制"を生む。当時の白人は働くのが大嫌い。それでアフリカへ行き、黒人を誘拐してタダで重労働を。タダとは…給料が安くてさ…なんて程度でなく、ゼロだ。この方法で米国は世界一リッチに。ところが白人は安心はおろか、もっと不安になった。200年間もの奴隷制で黒人の数が増えすぎたんだ。奴隷は反乱を起こし旦那様の首をチョン。その時、現れたのがサミュエル・コルト。彼は1836年、世界初の回転弾倉式の銃を開発。白人は喜んだ。でも南北戦争で北軍が勝ち、奴隷は解放。次々と首をチョンされると怯えた白人。でも黒人は復讐せず平和を望んだ。ところが白人は疑い深い。KKK団を組織するも1871年に非合法化されると、同じ年に全米ライフル協会(NRA)を設立。政治家は初の銃法を作り、黒人の銃所持を禁止した。米国、大当たりの年だ。KKKとNRA、この2つは偶然だが、ひとつは銃所持を促進し、ひとつは黒人をリンチ殺害。それは1955年まで続き、黒人女性(ローザ・パークス)が法を破ってバスで席をどかず…これをきっかけに黒人は公民権を要求。白人は恐怖に震え上がり、仲間の大勢いる安全な郊外へ逃げ込むと、2.5億丁の銃を買い、錠と警報器を付け周辺を門で閉ざした。こうして、ようやく安心と快適さを入手。皆は幸せに暮らしましたとさ」



カナダの人たちは家に鍵をしないの?
マイケルムーアが抜き打ちで玄関を開けると鍵がかかってない…
確かに日本でも田舎では鍵なんてしない。
東京に住んで長くなったからか、常に鍵をかけるようになった自分。

カナダ人
「米国人はカギによって他人を締め出すと考える。でもカナダ人にとっては、自分を閉じ込めることだ」

ムーア
「それはイヤ?」

カナダ人
「したくないよ、そんなこと。イヤだ」



カナダの学生①
「米国の番組を見ると、いつも殺人とか銃撃戦ばかりだ」

カナダの学生②
「米国人は好戦的だと思うわ。なんでも戦いで解決する。他所の国の紛争にも人を送り込んで戦って…カナダ人なら話し合おうとするけど、米国人は問答無用で殺す」



バリー・グラスナー
「なぜそうまで恐れるのか?それで儲けてる者が大勢いて、皆の恐怖が持続するように動いているからだ」



ナレーション
「怯える国民にとって最大の利益は、起業も政治家も責任を取らないという点だ」


この手のドキュメンタリーは問題提起をして、現状はなにも変わらないことが多いが…
銃弾をくらい障害者となったコロンバインの被害者と共にKマート本部へ、まさに恐喝レベルの断行。銃弾を売るなと迫る。
素っ気ない対応に、やはり…これで終わるかと思ったら。

翌日
コミュニケーショ部門の副社長
タヴィッシュ
「当社の声明を発表します。コロンバインの悲劇は今も記憶に新しく、2人は本当に…お気の毒です。当社は拳銃の弾薬の販売を段階的に中止していき、90日以内に作業を完了させます」


Walmartでも売ってるから、そっちも行かないとね…


マイケル・ムーア
「今度は僕の番だ。懸案事項を解決せねば…必要なものはスター地図だけだ」

そしてヨネスケ直伝の隣の晩ごはんのノリでお宅訪問するムーア。

全米ライフル協会(NRA)の一員であり、1998年には同会の会長となったチャールトン・ヘストン。会長は本来2期(1期1年)までだったが、規約が改正され2003年まで5期務める。この辺もなんだか異様な力を感じてしまう。

習近平やプーチンに通ずるやり方ではないか?


しかし…本当にどでかい邸宅だこと。

ヘストン
「自衛用の銃だ。弾を込めないでどうする」

ムーア
「でも、なぜ必要です?襲われた経験が一度もないのに…なぜ弾を込めておく?抜いてもよいのでは?」

ヘストン
「憲法の修正第2条で権利を保障してるからだ」

(これね…なにかと言えば、みんな修正第2条の話を持ち出す)

ヘストン
「快適なんだよ」

ムーア
「弾を込めておくと?」

ヘストン
「yeah」

ムーア
「つまり緊張が解け安心できる?」

ヘストン
「ああ」

ムーア
「不安が消える?」

ヘストン
「消えはしないが…権利を行使してるんだ。この国をつくった賢い白人の先達が残した権利を、ありがたく頂いてる」

(なんだこの言い草は…気持ち悪い。反吐が出るぜ)

ムーア
「弾を抜いて保管しても行使はできます」

ヘストン
「私の選択だ」

ムーア
「興味深い事実があります。米国ほど射殺事件の多くない国の人々は、"すぐ撃てる銃がそばにないからだ"と…。英国などでは入手もしにくい。ですが、カナダでは1,000万世帯に700万丁。カナダは狩猟国で数百万の銃。なのに射殺は数件です。人口3,000万の国でね。それで疑問なのは、彼らは身近に銃がありながら、なぜ我々のように殺し合わないのか?」

ヘストン
「私が思うに米国には流血の歴史がある」

ムーア
「ドイツにはない?英国にも?」

ヘストン
「程度が違うよ」

ムーア
「ドイツにはあまりないと?」

ヘストン
「いや、あるよ」

ムーア
「英国も300年間、銃で世界を征服した。暴力的です。彼らにも悪人はいるし、犯罪も多いし、銃も多い」

ヘストン
「その話は追究すると面白そうだし、君はもうだいぶ追究したようだ。だが私には、それだけだね」

ムーア
「意見はありませんか?なぜこの国だけがこれほど銃で殺し合うのか…」

ヘストン
「国民に多様な人種が混ざっているからでは?他の国と比べてね」

ムーア
「人種が原因と?」

ヘストン
「そうじゃない。そこまでは言わないよ。ただ、黒人の公民権運動ではだいぶ揉めた。だが私は答えられん」

ムーア
「多様な人種とは何を意味しますか?」

ヘストン
「きみが聞いたからだ。なぜこれほど米国人は殺し合うかと。それが事実かは知らんが…」

ムーア
「知ってるでしょ?米国の射殺件数は世界一だ」

ヘストン
「私の答えは、すでに言った。つまりこの国は暴力の歴史が深いんだ。ほかのどの国よりもね。ロシアや日本よりは浅い。ドイツより浅いがカナダより深い」

(え?何の話?そんな話してました?)

自分から手を差し出して握手をして、もう終わりだと立ち上がる。ムーアは質問を続けるも、逃げるように立ち去るヘストン。

ヨチヨチ歩くジジイヘストン。
なんだか哀愁のある背中。

6歳の被害者の女の子の写真をヘストン邸の柱に立てかけて帰路にたつムーア。
これは余計だったな…過剰な演出に見えてしまいドキュメンタリーの範疇から逸脱している。


典型的なアメリカの田舎のファッションスタイルなマイケル・ムーアが終始カッコよく見えて仕方ない。

こういう思いをキチンとカタチにして表現として残すことは素晴らしい。過剰な演出や編集があったにせよ…あとは見る側もファクトチェックなり自ら能動的に調べることで、より理解促進していくだろう。
Fitzcarraldo

Fitzcarraldo