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間違えられた男のnowstickのレビュー・感想・評価

間違えられた男(1956年製作の映画)
4.1
ヒッチコックのミステリー作品の中では、最もリアリティがある作品。実際に起きた事件を忠実に映像化していて、撮影場所も実際の現場を使ったり、役者も一部は本人が本人役を演じていたりとの徹底ぶり。
ヒッチコック作品はリアリティの無さを映像表現の良さでカバーしている節があるが、本作はその減点ポイントが無い分、緊迫感が持続し、質の高い映画になっていると思う。
ヒッチコックは本作を撮ったことにより、これ以降のサイコやフレンジーといったミステリー物においてもリアリティが向上していると思う。
監督本人は本作を「シリアスに作り過ぎた」と言っているようだが、スコセッシやゴダールも本作を賞賛しているようだし、これぐらいでちょうど良いと思う。

「減点ポイントが無い」以外にも、主人公が手錠をかけられるシーンや牢屋に閉じ込められるシーンにおいて、鍵をかける描写がクローズアップされていたり、ヒッチコックの他の作品ではしばしば割愛される裁判シーンが丁寧に描かれている、といった加点ポイントも山ほどあって、とても良かった。純粋に良い映画だと思う。
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