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若者たちのakrutmのレビュー・感想・評価

若者たち(1967年製作の映画)
4.2
1960年代後半の東京を舞台に、両親を亡くし、貧困に喘ぎ、喧嘩をしながなも、肩を寄せ合って生きていく佐藤家の5人兄弟を描いた、森川時久監督のドラマ映画。フジテレビで放映された同名連ドラの映画版であり、森川時久監督もフジテレビのディレクターとして演出を担当している。ドラマと映画でストーリーが独立しているのかどうかはわからないが、5人兄弟の設定や配役は共通である。

5人兄弟がちゃぶ台を囲んで団らんするシーンをホームとして、家の外での兄弟それぞれのドラマが展開されていく。登場人物たちの熱い言動は、今から見るといかにもダサいのだが、私の世代ではこの感覚はまだ自然と受け入れられる。というか、懐かしい気さえする。こういう描き方が陳腐にならないのは、どんな境遇にあっても将来を夢見ることができたという時代背景があったからかもしれない。そしてドラマにマッチしているのが、黒澤久雄率いるザ・ブロードサイド・フォーが歌っている主題歌。音楽の教科書に載るような名曲が主題歌であること考えると、このドラマの素晴らしさは言うまでもないだろう。

そして何と言っても、兄弟だとは思えないバラエティに富んだ5人兄弟のキャラが魅力的である。田中邦衛が演じる長男・太郎の、保守的な考え方ではあるが皆の親代わりとして働いている姿(割烹着姿が印象的)は、後の黒板五郎につながるようなキャラである。橋本功演じる次男・次郎の熱血ぶりや、山本圭演じる三男の学生運動に身を投じるシニカルさなど、兄弟間の対比の描き方も見事である。紅一点の佐藤オリエ(演じる佐藤オリエ)の地味で、知的で、意志が強い感じもグッとくる。

・まだデビューしたばかりだと思われる栗原小巻が、顔パンパンだけど可愛い。そういえば、私の父がコマキストであった。
・石立鉄男にもこんな若い頃があったんだと思う(あ誰でもあるわな)ほど、若くてフレッシュ。私の世代で石立鉄男というと、どうしてもあのアフロヘアーが思い浮かんでしまう。
・小川真由美は、やっぱりこういうキャラの役なのね。太郎が可哀想すぎる。本作での田中邦衛の役柄が黒板五郎につながっていったのかも。
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