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アランのtheocatsのレビュー・感想・評価

アラン(1934年製作の映画)
4.0
ネタバレ
あんな小船での原始的ウバザメ漁に驚愕!

長編ドキュメンタリ-の父とされるフラハティ監督1934年作品。

ドキュメンタリーとはいってもやらせはあるんじゃないかと疑心たっぷり。

荒い波の中砂浜ならぬ〝岩浜”に船を寄せて上がろうとするが波に押されては引かれなかなか上陸できない、ようやく浜に乗り上げるが浜で待っていた妻まで海の中に入り船を引き上げようと苦戦。ようやく船を揚げても網が流されそうになりまた海の中へ。結局人間が流されそうになり男が女の髪を引っ張り無理やり断念させる。
この場面だけでも「そもそも船着き場がないというのもおかしな話ではなかろうか?」などシニカルになってしまう。

土のない島ではジャガイモを植える畑は岩を砕き、或いは岩の隙間にたまった僅かな土を掻きだし砕いた岩の上に昆布など海藻をまず敷き、その上に土を敷いて畑にするという。
これに関してはまあまあ納得できるも、砕石作業など何がしかやらせはありそうな雰囲気。

しかし、ウバザメ漁に関しては誰がどう見ても本物。あんな小さな4人乗り程度の手漕ぎ船で1トン越えの巨大なサメとやり合う場面にはこちらも冷や冷や。たしかにひれで打たれたらただじゃ済まないだろうし、引っ張り負けして海中に引きずり込まれたりなどない訳がないよなと容易に想像できる。このシーンに関しては圧巻お手上げでしたね。
ただ、ともし火油として肝油を取るだけが目的のようで肉を食べる場面がなかったのは残念。肝油目的で鯨や巨大サメが無駄に殺戮された愚かな歴史を考慮すれば共感はできない。
現在ではあんな漁は当然許されていないだろうし、ウバザメが島近くに群れで泳いで来るほど生息数が回復しているかは分からない。

最後に漁に使った船が荒波の上陸に失敗し大破という場面でエンド。
「海は与え、海は奪う」という以前何かで目にした格言が思い浮かびましたね。

本編視聴後にディスク特典の解説を読んで、監督は1年以上島に住み込み、フィルム現像所まで作り、実際の島の人を俳優に真摯に本作を撮影したとのこと。
この映画は本物のドキュメンタリーだったようです。降参


総評四つ星


上の格言は聖書中「主は与え、主は奪う」のもじりですね、きっと。

002009
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