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氷点のharuのレビュー・感想・評価

氷点(1966年製作の映画)
3.5
人間の原罪。

3才の娘ルリ子が殺され、嘆き悲しむ妻の夏枝のため、辻口啓造は幼い女の子を引き取ることに。陽子と名付けられたその女の子を夏枝は可愛がるが、実は陽子はルリ子を殺した男の娘だったのでした。

三浦綾子のベストセラー小説「氷点」の映画版。何度も映像化されてるので有名ですが、宗教が絡むとやっぱり理解が難しい。
あらすじが昼ドラ並みにドロドロにもかかわらず、ラストで「人間の原罪」という壮大な物語になりますが、それでもやっぱり「氷点」と言えば継子をいじめまくる夏枝でしょう!私の中ではドラマ版の浅野ゆう子のイメージが強いのですが、本作の若尾文子も結構なイジワルで、若かりし津川雅彦(イケメン)が「中年女のヒステリー」と評するほど。特に本作の夏枝はちょいちょい「女」を出してくるあたりが、強烈です。
しかし諸悪の根源は、「汝の敵を愛せよ」という聖書の教えを実行してみせるぜ!とかワケわからんことを言いつつ、実際は妻に浮気の制裁を下すために陽子を引き取った啓造です。程なく真相を知った夏枝が陽子に冷たく当たるのも当然のことで、そんな母の態度から、陽子は自分が辻口家の子供ではないことを察している。しかし兄が味方だったこともあり、捻くれることもなく、清く正しく天真爛漫に育つ陽子。しかしこれがまた夏枝の勘に障るという流れ。
正直陽子が「良い子」すぎて、夏枝の気持ちがわからなくもない…と言ったらアレですけど、逆に陽子が程々にグレた方が辻口家は安泰だった気がする。しかし陽子は
常に正しくあれと自分を律し、気づけば一点の曇りも許せないパーフェクトヒューマンとなっていた。
曇りまくり濁りまくりの私からすれば、陽子に全く共感できないんですけど、彼女は自分の生い立ちを知ることで、キリスト教の教えの一つ「人間の原罪(人類は生まれながらに罪を負っている)」について、身を持って感じてしまう。これを「赦す」とは、つまり受け入れること。周りに拒否されまくった陽子には、非常に難易度が高い。
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