ノットステア

お引越しのノットステアのレビュー・感想・評価

お引越し(1993年製作の映画)
3.7
○U-NEXT紹介文
両親の離婚騒動に揺れる少女の思い。巨匠・相米慎ニ監督が手掛けた家族のドラマ
見どころ
主人公の少女役にオーディションで選ばれた田畑智子が本作で女優デビュー!「サマーウォーズ」や「八月の蝉」などで知られる奥寺佐渡子の脚本家デビュー作としても注目。
ストーリー
両親が離婚を前提とした別居生活に入り、母親のナズナとふたり暮らしになった小学6年生のレンコ。家でも学校でも行き場の無さを感じていた彼女は、昨年も行った琵琶湖湖畔への家族旅行を復活させれば、再び3人で暮らせるようになるのではないかと考えるが…。



○感想
小学6年生女の子が成長する話。家庭内の問題が主人公にとって都合よく解決するわけではない。両親を大きく変えることはできない。自分が変わるしかない。

『お引越し』を観てから『セーラー服と機関銃』と同じ監督だと気づいた。映像とか似ている感じがする。

余白の多い映画だった。テンポ遅め。ゆったりとした作品。
アルコールランプのあたりなど盛り上がる(って言っていいのか?)シーンがいくつかある。

アルコールランプを転がしてボヤ騒ぎを起こす。母が学校に呼び出させる。レンコは母からも先生からも走って逃げる。停まってるバスに駆け込む。バスはレンコを乗せてすぐに走り出す。
母親も乗せるだろ、あの距離なら、、、


以下、あらすじ











○あらすじ
京都の小学六年生、漆場レンコ。
両親が離婚を前提した別居を始めることになる。
レンコは昼休みに学校を抜け出し、母ナズナに内緒で父ケンイチの引っ越しについて行く。父の後輩カップルが手伝う。

レンコと母ナズナの二人暮らし。「門出」だと言う母。二人で外食。
旧姓を名乗る。
母ナズナの名前が記入された離婚届。レンコは離婚届を隠す。
母ナズナは合気道を習い始める。
母ナズナは家事の分担や約束を決め、レンコに声を出して読ませる。納得できないレンコ。
父ケンイチは新しい電話番号を教えるついでに、レンコにキリンの人形を貸して欲しいと電話で求める。
母ナズナの決めた約束により、レンコは許可なく父ケンイチに会いに行ってはいけない。

レンコは同級生の女の子とケンカ。それを仲裁したミノルに両親のことを打ち明ける。
帰り道に夕食の買い出し中にレンコはケンカした女の子と遭遇する。その女の子は両親の離婚により京都に引っ越してきた。両親の話。レンコの両親がうまくいっていないことを見抜かれる。
女の子は、母親に内緒で再婚した父親に会いに行ったことがあると言う。父をよろしくお願いしますと言うつもりだったらしい。
家事の分担を守らない母ナズナ。レンコは分担表を破り捨てる。
ケンカした女の子はクラスで浮いている。レンコが仲良くしていることに同級生たちが文句を言う。レンコはアルコールランプを手に取る。先生も止めようとするも、テーブルの上にアルコールランプを投げ捨てる。ボヤ騒ぎ。母ナズナは学校に呼び出される。

レンコは走って逃げ、一人バスに乗り、父ケンイチの会社に向かう。
父の会社の目の前の公衆電話から電話。
レンコ「なんで別々がええの?昔は仲良くしてたやんか。なぁ、あたしはお父さんとお母さんが喧嘩してもがまんしたよぉ?そやのになんでお父さんらは我慢できひんの?)
父「堪忍なぁ。今なぁ、父打ち合わせ中なんや。レンほなこうしよ?宿題や宿題。父の方の夏休みの宿題。な?」
レンコ「今」
父「時間、くれへんか?」
レンコ「不公平や!お父さんあたしに考える時間くれへんかったやろ?」
父は祭りの音が電話越しからも聞こえることに気づく。近くにいることがわかる。

夜帰宅。同級生のミノルがレンコの帰りを待っている。
家でなんかせこいわと言って友だちの大木ミノルはもっといい方法を教える。漆場(=レンコ)が幸せになれる方法をずっと考えていた。巻物を広げて見せる。
オヤジの部屋に立てこもるべし
長引くと、不利だから早めに決着をつけるべし
しかし、見せかけは一生閉じこもるつもりのようにするべし
脅し文句は近所に聞こえるぐらいの大きい声で叫ぶべし
テレビ局が来たらなるべくインタビューには応じるべし
決行は終業式の日

レンコはミノルの計画を実行に移す。準備。母ナズナが早く帰宅してしまう。
レンコは風呂場に立て籠もる。
父ケンイチも駆けつける。後輩カップルも来る。説得しようとする。
父ケンイチと母ナズナの言い合い。
母が手伝うてってゆーたときに、父は「お前は、経済的協力をしてへんくせにうるさいこと言うな」と言ったらしい。ただそれは昔のこと。
母「うちがぎょうさん稼ぐようになってからあんた変わってしもうたわ」
母「結婚ゆーのはな、どっちか強いもんが無理を通す殺し合いや」
レンコ「なんで産んだん?なんで産んだん?」
母ナズナは風呂場の扉のガラスを腕で破る。血だらけ。扉を開ける。
沈黙。
夜。父ケンイチにレンコはキリンの人形を渡す。キリンの人形は階段から落ちる。

週に一回の食事会。父ケンイチと母ナズナは仲が悪い。レンコは月に一回でもいいと言う。
レンコは父ケンイチのバイクに乗せてもらい帰宅。
レンコは来年は3人で大文字焼きを見ようと言う。

レンコは毎年恒例の琵琶湖旅行を計画。資金を調達。電車や旅館の予約。
母ナズナと二人で旅館へ。そこに父ケンイチがいる。母ナズナは嫌がる。昔みたいに三人で旅行に来たこと。昔は楽しかったこと。
レンコはホテルから走って出ていく。父ケンイチが追いかける。

大縄跳びの比喩
父「縄を回してるの疲れてしもうたんや。3人やったら1人だけ休むわけにはいかんしな。」
レンコ「そんなこと、そんなアホなこと言いに来たんか?」
父「宿題やったしな」
レンコ「最低や」
父「最低言われてもな。それしか言えへんのや。最初はちょこおっと夢見てるだけやった。それが、だんだん抑えきれんようなってな。1人で生きたい。そう思た。」
レンコ「来るな!お父さん。あたしのこと好きか?」
父「ああ。好きや。大好きや。」

レンコは遠くへ走り出す。
偶然出会ったおじいさんに水をかけられる。おじいさんの家で横になり、眠る。おじいさんは昔にも水をかけてしまったことがあるらしい。その相手を間違えて覚えている。
おじいさんの娘「自分の娘のことも覚えてへんの?」
おじいさん「自分のしたこと、全〜部覚えてたら、こないに歳取ることができんかったやろな」
おじいさんの娘「それもそうどすな」
二人の笑い声
おじいさんの娘「ごめんごめん、起こしてしもうた?」
レンコ「忘れても悲しいことない?」
おじいさん「ない。忘れてしもたほうがええんや。昔の思い出っちゅうもんは、片手で数えられるくらいで十分や」
レンコ「(数える)足りひん」

レンコはおじいさんと一緒に花火を見に行く。
母ナズナが人混みの中レンコに声をかける。
レンコは早く大人になると言う。レンコはお腹を抱えしゃがみ込む。
レンコはおじいさんに来年も会う約束をする。
レンコは一人で歩き出す。暗い森の中。

一人で眠る。目を覚ます。湖に山車。昔のように笑い合う両親と自分の姿を見る。山車が燃える。両親はレンコをおいて湖に沈む。レンコはもう一人の自分を抱きしめる。
レンコは「おめでとうございます」と繰り返す。

母ナズナがレンコを見つける。
帰りの電車。レンコは隠していた離婚届を母ナズナに返す。

夏休み明けの作文の発表。レンコは家族のこと発表する。

先生とクラスメイトと歩く。一本隣の道に行くとレンコはいろんな人とほんの少しずつ関わる。母ナズナや父ケンイチや見知らぬ子どもたち。
もう一本隣の道に行く。中学生のレンコの姿。